広島と大阪で高校無償化、補助金裁判口頭弁論
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一昨日は東京で無償化裁判の口頭弁論が開かれたが(昨日のエントリ参照)、ほかの地方でも「高校無償化」からの朝鮮学校除外や地方自治体の補助金不支給と関連した裁判が続いている。
5月13日、広島地方裁判所では、広島朝鮮学園と広島朝鮮初中高級学校生徒・卒業生らが「高校無償化」法に基づく指定の義務付けと「無償化」制度から排除された生徒への国家賠償を求めた裁判の第7回口頭弁論が開かれた。
原告側は4月30日付で準備書面7、8を提出。準備書面7を通じて被告準備書面4、5に対する反論を行った。これについて説明する前に、以下、最近までの双方のやりとりを簡単に整理してみる。
被告(国)側は、朝鮮学校を「無償化」制度の対象から外したのは国が定めた基準(規程13条)を満たしていると認められないためで、朝鮮学校側が基準を満たしていないと疑う事情があると主張してきた。ここでいう規程13条とは、「債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校運営の適正」のこと。平たく言えば、「無償化」の対象になる学校は法律に基づいて運営が適正に行われていなければならない、という意味だ。
これに対して原告の広島朝鮮学園側は、▼規程13条は「無償化」法から委任を受けて設けられた規則ハ号(就学支援金支給の対象となる学校の類型を定めた項目で、外国人をもっぱら対象とする各種学校のうち、「高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして文部科学大臣が指定したもの」)による再委任を受けて規程されたものであり、▼同法の趣旨からすれば、教育内容・課程に照らして判断する細則を委任しているだけで、財務関係を含む学校運営の適正という観点からの判断など委任していない、▼ハ号の具体化に際して規程13条を置くことは無償化法の委任の範囲を超え、裁量権を逸脱しており、無効である、▼仮に有効だとしても、学校運営は適正におこなわれている、などと反論した。これに対して国側は、規程13条は「委任の範囲内であり無効ではない」、東京都による朝鮮学校調査報告書の中で不適正な財産管理運用状態が報告されたことを挙げて、「規程13条基準に適合すると認めるに至らないとの判断は合理的である」などと再反論した。
そして今回、原告側が被告側の再反論に対する再々反論を行ったのだが、そのうちの一部をかいつまんでつ説明する。
【規程13条は無効ではないという被告側の解釈は誤りである】
-被告は、就学支援金の支給対象となる外国人学校について、就学支援金の授業料充当への確認の体制が整っていることが当然の要件になると主張しているが、授業料充当の確認体制などはそもそも高校無償化法上要求されていない
-被告は、「高等学校の課程に類する」という際の「高等学校の過程」という概念には学校の運営体制を含むと主張しているが、学校の組織や編成を「課程」という文言に読み込むことは可能としても、学校の運営体制やその適正までをも含むことが明らかとは言えない
【過去の問題およびほかの朝鮮学校の事情を考慮することは許されない】
2013年の東京都による調査報告書では、朝鮮学校で不適切な財産の管理・運用が見られたと指摘されているが、同報告書は本件不指定処分後の報告書なので考慮要素にはならない。また、各学校によって判断資料が異なるので、東京朝鮮学園の事案を広島朝鮮学園に対する判断材料にすることは許されない。
【本件不指定処分は国際人権法に違反する違法なものである】
-被告は、規程13条の問題で朝鮮学校を不指定にしたと主張しているが、これは欺瞞・後づけの形式的理由に過ぎず、実態は人種差別に他ならない。
-被告は、国連人種差別撤廃委員会などの所見が就学支援金制度や高校無償化法などの基準を踏まえたものではなく、朝鮮学校や総聯に対する具体的な調査を行ったうえでなされたものではないとしているが、それは誤りである
-被告は、「無償化」からの朝鮮学校除外は政治的理由による区別だと主張しているが、人種差別撤廃委員会などはこれを是認していない
一方、準備書面8では、ハ号規定を削除したことの違法性と原告不指定の違法について、従来の主張を整理するとともに、いくつか主張の補充を行った。
今回の口頭弁論では、裁判長の交代に際した弁論の更新手続きがとられた。原告側弁護士が資料を手に、これまでの準備書面における論点を説明した。また、原告である広島朝鮮初中高級学校の卒業生2人が意見陳述を行った。
翌14日には、大阪府と大阪市が府、市内の朝鮮学校に対する補助金を不支給とした処分の取消と交付の義務づけを求めた裁判の第14回口頭弁論が大阪地裁で行われた。
今回、法廷には大阪府下全10校の朝鮮学校保護者を対象に昨年実施されたアンケート調査の原票と、結果を統計としてまとめた資料、アンケート結果を分析した大阪市立大学の伊地知紀子教授の鑑定意見書が証拠として提出された。アンケートは、府下10校の朝鮮学校に子を通わせる776世帯を対象に行われたもので、そのうちのおよそ9割にあたる696通が回収された。
法廷では原告側代理人の普門大輔弁護士が意見陳述を行い、アンケート結果から読み取れる朝鮮学校、児童・生徒、保護者らの実像についてのべた。普門弁護士は、「保護者の8割以上が在日3世で、日本に生まれ育ち、今後も日本社会で生活していく人々」だとしながら、国籍などに見る朝鮮学校保護者の多様性に触れ、政治情勢や外交問題などにからめて「紋切型でとらえることは実態からかけ離れた見方」だと指摘。また、多くの保護者が高額な学費などのデメリットにもかかわらず子どもを朝鮮学校へ通わせている理由について、「民族性を育み、母国語を習得させ、交友関係を形成させることにあり、子どもが自らのアイデンティティを知り、歴史性を継承し、日本社会で自分を大切な存在として認識し、生活していくための複眼的な思考を学び、人格を形成発展していける場であること」だと説明した。そして、アンケートに記された保護者たちの声も紹介した。
広島「無償化」裁判の次回期日は8月5日午前10時30分から広島地裁で、大阪「補助金」裁判の次回期日は8月30日午前11時から大阪地裁でそれぞれ開かれる。(相)
メディアを味方につける
私の家では「東京新聞」を講読しています。ローカル紙ですが、記事はリベラルです。定期的に、ヘイトスピーチについての特集記事が掲載されています。これを読む読者は、絶対に在日コリアンの味方になるでしょう。しかし、高校無償化についての記事は、全く載っていません。図書館で、新聞の全国紙、ローカル紙を読んでも、全く載っていません。よって、日本人は高校無償化問題は知らないと思います。以前にも書きましたが、新聞の全国紙、ローカル紙に投稿してみては如何でしょうか?又、もう既に在日コリアンの方たちはやっていると思いますが、他のテレビ局、ラジオ局、電子媒体に積極的に取り上げてもらうようにして、メディアを味方につけるようにするとよいと思います。そうして日本中の日本人や日本在住の他の様々な国籍の人たちが、在日コリアンの方たちの味方になるようにしたら、高校無償化も勝ち取れるでしょう。