映画「標的の村」を観て
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5年前、新型輸送機「オスプレイ」の配備とそのための離着陸帯(ヘリパッド)建設に反対し闘った、沖縄県東村高江の住民たちの姿を記録したドキュメンタリー映画「標的の村」(監督:三上智恵)。先日の新聞の折り込みに、近所で上映会をするという案内が入っていたので観に行った。
ヘリパット建設を阻止しようと座り込んだ住民を国が訴えたSLAPP裁判や、ベトナム戦争時に米軍の実践訓練場として造られたベトナム村のことなど、自分が知らなかったことが語られていた。
なによりも知らなかったのは、そこに映し出される住民たちひとりひとりの姿だ。説明もなしにオスプレイ配備を強行する国への怒り、常に「日本人」の捨石にされてきたという怒り、そして沖縄への思い…。必死の抵抗も虚しく、オスプレイはあっけなく沖縄に到着する。そのようすを眺める住民たちから、言葉にできないほどの悔しさが伝わってくる。
途中、同じ沖縄県民である警察と住民が衝突するようすを上から見下ろす米兵の姿が映る。そのほんの一瞬の映像が、沖縄の現状を生む根本的構図を映し出していた。
闘い続ける大人たちを見てきた11歳の少女が「お父さんとお母さんがしんどくなって頑張れなくなったら、次は私が頑張る」と話す姿に胸が締め付けられる。
沖縄の基地問題はニュースでも見かけるが、そこには映されていないものがこの映画で見えてくる。「スクリーンに叩きつける、伝えきれない沖縄」。見終わってからもう一度チラシのキャッチコピーを見ると、その意味がひしひしと伝わってきた。
同じ三上智恵監督が手がけた映画「戦場ぬ止み」が今月から上映されている。それと合わせて、この映画もたくさんの人に観てほしい。(S)