映画「蒼色のシンフォニー」
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朴英二監督の最新作「蒼色のシンフォニー」がいよいよ上映間近だ。8月9日に関係者の試写会があり、一足先に映画を見てきた。
映画の主人公は、今春、茨城朝鮮初中高級学校を卒業した11人の高校生たち。
修学旅行で訪れた平壌が舞台で、現地の床屋でカットを楽しみ、同年代の生徒と交流するなど、行く先々で、よくうたい、笑う、開放感あふれる姿が印象的だ。
しかし、朝鮮での日々は楽しいものだけではない。朝鮮戦争時の民間人虐殺を知り、板門店で軍事境界線を見ると、とたんに、日本で自身が置かれた境遇が重なる生徒も。「自分は誰か、どこから来たのか」を探る旅なのだ。
平壌市民との交流も映画の見所だ。アコーディオンを手にさらりと洋楽を歌う若い女性、久しぶりだねと、親戚の子を慈しむように声をかけるホテルの販売員…。かれらにとって、朝高生は一般の旅行客ではないようだ。それは、日本での在日朝鮮人の境遇を知るからこそ、だろう。注がれる眼差しは、無償化から朝鮮高校を外し続ける日本政府とは対照的で、朝鮮での日々は、今の日本でかれらが背負う「荷の重さ」を逆説的に浮かび上がらせる。
映画ではかれらの卒業式の場面も流れる。12年間、親元を離れて寄宿舎生活を送った男子生徒は母親を前に「教員になる」と決意を語った。東北の朝鮮学校で、中級部3年間をクラスメートなしで過ごした女生徒の母親の意志も深い。映画は、圧倒的な差別のなかで、子どもたちへの誇りを胸に「解放区」を作り上げた大人たちの軌跡の物語でもある。
朝鮮学校を撮り続けて10年。朴英二監督が映画を志した茨城発のドキュメンタリー映画は、メディアには流れない朝高生の素顔を伝えたいとの思いに満ち溢れていた。同時に、日本ではタブーにされている、在日朝鮮人と祖国の関係にも迫る。
予告編は以下
https://www.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=K6SPyh9Ztlg&app=desktop
映画の製作を後押ししたのは茨城県青商会元会長の李忠烈さんはじめ、元青商会の有志たち。金剛山歌劇団やフリーの音楽家たちの力添えも大きく、映画を作りあげたチームワークにも脱帽した。
公開は12月の予定!(瑛)
※冒頭の写真はフェイスブック「蒼色のシンフォニー」から