半分の裁判記
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初めて裁判所に足を運んだのは2013年12月。愛知無償化裁判・第4回口頭弁論の時です。
以来、第5回、第8回、第9回、第11回、第12回と取材に訪れました。昨日は名古屋地裁で同裁判の第14回口頭弁論があり、私はちょうど半分を、実際に現地で見てきたことになります。
今回、原告側は主に、国際人権規約違反に関する準備書面<14>と、愛知県立大学の山本かほり先生による意見書を提出。法廷では、準備書面の要旨について、弁護団の中島万里弁護士が10分ほどの陳述をしました。
原告側は、高校無償化から愛知朝鮮高校の子どもたちを排除した国の行為が、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約=社会権規約に違反すると指摘しました。
具体的には社会権規約のうち、無償教育の機会均等について定められた<第13条>と、社会権規約に規定される権利の無差別平等・漸進的達成を保障する<第2条>に、国が違反しているというもの。
その理由として、無償化制度からの朝鮮高校除外は「日本人拉致事件が未解決であることや、朝鮮民主主義人民共和国や朝鮮総連と朝鮮学校のつながりという外交的政治的理由により行われており、そのような高校無償化法の趣旨目的から完全に逸脱する曖昧な理由を、別異取扱いの目的とすることは、正当にはなりえ」ないからと強く主張しました。
…長いですよね。しかし今回いろいろと大切な話があったので、まだまだ続きます。お時間あります時に読んで下さい。内容は月刊イオ11月号の「裁判記」でも紹介します。
今回、傍聴券を求めて地裁前に並んだのは約140人。およそ50人ほどが抽選からもれてしまいました。報告集会の前には、そんな方々のためにミニ学習会も。USM(ウリハッキョサポートネットメンバーズ)の日本側共同代表・村田峻一さんは、8月末の訪朝体験を写真で報告していました。文化や生活様式は違っても、普通に生活を営む人たちがいる。自分が見た、朝鮮民主主義人民共和国のありのままの姿を、行ったことのない他の支援者たちに伝えたかったといいます。
報告集会では、まず法廷での内容の報告があり、続いて山本かほり先生が執筆した意見書について発表がありました。本人が「私の研究者人生の中でたぶん一番心を込めたと思う」という意見書は、400字詰め原稿用紙で160枚を超える大作です。
「朝鮮学校の子どもたちはなぜあんなに明るいの?」を問いのスタートにして、愛知朝鮮中高級学校に何度も足を運びながら数多くの人たちにインタビューし、また自身も朝鮮民主主義人民共和国を9回ほど訪朝しながら見てきたこと、考えたことをまとめたといいます。
朝鮮民主主義人民共和国との関係についても触れながら、多方面から「子どもや保護者たちにとって朝鮮学校はどんな存在なのか」ということについて考察しています。笑いも交えた発表に、参加者たちは自然と身を乗り出して耳を傾けていました。
報告後、内河惠一弁護団長は「山本先生にしか書けない内容で、裁判所にインパクトを与えられたと思う」と評価していました。
私は、以前に北海道朝鮮初中高級学校の藤代隆介先生を取材した時もそうですが、私たち在日朝鮮人にとって「当たり前のこと、胸を張っていいこと」を改めて気づかせてくれる内容で、きっとみんな勇気というか、肯定感のようなものをもらえたのではないかなと感じました。
また、この日は愛知朝高3年の生徒たちが傍聴にかけつけました。報告集会では2人の生徒が代表して発言しました。
「自分たち高3が傍聴と報告集会に参加するのはおそらく今日が最後になるが、自分は朝鮮大学校に進学する。大学での4年間も無償化実現のための運動に捧げ、卒業後は愛知中高に教員として帰ってきて、裁判が続く限りここで闘っていきたい」という頼もしい発言に会場からは拍手喝采。
「進路は様々でも、私たちの原点であるウリハッキョは変わらない。ずっとそこにあり続けるように、力を合わせて守っていきたい。いま、運動会の練習が始まっているが今年のテーマは『明るい未来』。当日、みなが胸を張って明るい未来に向かって走っていけるよう練習を頑張りたい」という決意には、温かい拍手が送られました。
そして昨日は僭越ながら私も発言。月刊イオの紹介と、イオで出版した『高校無償化裁判』の紹介をさせていただきました。話しながら少しジーンとしてしまったのは、他の発言者や支援者たちの熱、というか気持ちがうつったからでしょうか。「私たちは常に現地にはいられない分、こういった書籍や記事、またブログなどを通して、少しでも多くの人に自分が見て感じたことを伝えることで支援運動に貢献していきたい」と、応援の気持ちを伝えました。
無償化裁判が続く限り、私もできるだけ現地に足を運んで、当事者と支援者の言葉や表情、思いを、これからも広く、強く発信していきたいと思います。
無償化裁判の概要、朝鮮学校が排除されるまでの経緯、日本政府の主張の不当性、日本各地5ヵ所の裁判と支援運動の状況など、現時点での総まとめと言える『高校無償化裁判』。下の画像をクリックすると詳細も見られるので、ぜひチェックしてみて下さい。(理)
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