東京無償化裁判に、全国のオモニたちが
広告
62人の東京朝鮮高校生たちが高校無償化への差別なき適用を求めた、東京無償化裁判第7回口頭弁論が9月18日、東京地裁で行われた。
この日は、被告・国側から第4準備書面が提出された。国は朝鮮高校を不指定処分にした主な理由を、「規程13条に適合すると認めるに至らなかった」と主張しているが、毎度のように、高校無償化法の趣旨や、原告が主張する差別性への正面きった反論はなかった。
東京弁護団の主張は、無償化法はすべての子どもを対象にしているし、朝鮮高校は、指定基準を満たしている、という点に尽きる。それに対して、国側は他の外国人学校には適用すらしない「規程13条」を持ち出して、朝鮮高校は適正な学校運営がなされていない、と主張する。
規程13条は、「…指定教育施設は、高等学校等就学支援金の授業に係る債権の弁済への確実な充当など、法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」というもの。
この13条は、各学校に支給された支援金を生徒たちの授業料に確実に充てるための「管理の適正」と「関係法令の遵守」を定めたもので、就学支援金を生徒の授業料にきちんと充てるよう管理し、関係する法律を守りなさい、というものだ。
国は、朝鮮高校は朝鮮総聯の「不当な支配」を受けていて、朝鮮総聯が朝高を利用して資金を集める疑いがあるから、朝高が就学支援金を授業料の支払いに充てない可能性がある、と言っている。つまり、朝鮮高校の排除には政治的、外交的な判断が、加わっている。しかし、それを言うと違法になるため、国は「13条」を持ち出しているのだ。この裁判の勝敗は、裁判官が高校無償化法の趣旨に立ち戻って判断できるかどうかにかかっていると言えるだろう。
参考までに、今回、出された国の反論は以下のようなものだった。
◆高校無償化法はいかなる場合でも、どのような教育機関に在学する生徒であっても、すべて対象としているものではない
◆規程13条の適合性に係る審査として、関係法令に基づく学校運営の適正性を審査することは当然できるのであり、原告らが主張するような形式的な審査や事務的な事項についての最低限の審査等に限られない
◆(朝高の不指定処分が審査会の意見を聴かずになされた、という原告の主張については)審査会の設置が同法によって要請されている、とする原告らの主張は失当である。
◆(東京朝高が、規程13条の要件を満たしているとの原告の主張に関しては)
朝鮮総聯が朝鮮高校を利用して資金を集めていると疑われる事情がある、という疑いを根拠に正当化。
裁判である以上、法律に基づいた反論がなされるべきだが、国の反論は、国や文部科学大臣の「裁量」、つまり、さじ加減ひとつで、どうにでもできると、言わんばかりの反論だった。憲法を都合よく解釈して、安保法案を成立させた方法とまったく同じだと言える。
安保法案が成立された日、ある専門家が、「日本では三権分立が崩れた」、と話していたが、裁判のたびに同様の感想を抱く。高校無償化法は、学べない子どもをなくすために生まれた法律だし、その学校が高校レベルかどうかだけが判断基準のはずなのに、根拠のない疑いを持って支給対象にしない、ということを裁判所は通すのか、と。
閉廷後の報告集会では、李春熙弁護士による裁判の解説が行われた後、弁護団の弁護士による、裁判の解説があった。
その席で、師岡康子弁護士は法廷で裁判官が原告側弁護団に「反論しますか?」と聞いていたことに言及し、「これは珍しい。国側の反論が反論する中味ではない、その程度のものと理解しているのではないか」と分析していた。裁判は最終段階に入っている、との予想も示された。今後は、原告の訴えがよりストレートに伝わるよう、証人尋問、意見書などを準備していくことが課題となるだろう。
次回期日は12月8日、11時から103号法廷で行われる。
この日はなんと、日本各地の朝鮮高校からオモニ会会長らが東京に集結。安保法案が成立される、という状況の中で、20数人のオモニたちが、午前中から議員会館を分刻みに回り、国会議員とも面談しては、無償化差別を訴えていた。その後、オモニ会会長たちは、参議院議員会館内で行われた東京無償化裁判の報告集会にも参加し、連帯を表明。
その足で文部科学省に向かい、9月12日に行われた第10回中央オモニ大会参加者一同の名前で、下村博文・文部科学大臣宛てに朝鮮高校への「高校無償化」制度即時適用を求める要望書を提出した。
オモニたちは、文科省前の金曜行動も主催。約300名の参加者とともに、省内で働く職員や道行く人たちに、子どもたちに教育の平等を、と訴えた。
京都朝鮮中高級学校オモニ会の金由美会長(56)は、「私たちの子どもが差別され、ないものにされてきたことを、ガマンできない。差別され、しんどいこと、むずかしいことに慣れてしまうこともあるが、今日、闘う意志を持った全国のオモニたちとともに、文科省に来たことが力になった」と力強く語った。また、東大阪朝鮮中級学校オモニ会の金菊江会長(48)は、「ひとつ、ふたつ、仕事をしながら、おかずをひとつ、減らしながらも、子どもたちが胸を張って生きれるよう、学校に送っている。後輩たちのために朝鮮大学生たちが一丸となって続けている金曜行動がいつまで続くんですか」と差別の根絶を訴えた。
無償化排除から6年目の秋。
この日の報告集会や金曜行動には、日本の国会議員や日本の友人の参加も多かった。
各地のオモニたちの強い意志で進められた国会と文科省要請、金曜行動に、勇気をもらったのは私一人ではないだろう。(瑛)