NNNドキュメント『南京事件/兵士たちの遺言』
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日本テレビで日曜日の深夜に放送しているNNNドキュメントという番組をご存知だろうか。さまざまなテーマの良質なドキュメンタリーを数多く放映することで知られ、日曜深夜という時間帯ではあるが、私も関心分野や興味を引く内容であれば、録画や再放送を含めてよく見ている。
4日深夜放送分の『南京事件/兵士たちの遺言』が各所で話題になっている。日中戦争時に中国の南京で起こった旧日本軍による虐殺事件に関して、従軍した旧日本軍兵士たちの従軍日記や過去のインタビュー、証言など一次資料を基に事件の裏づけ取材を行い、あらためて実態に迫る内容だ。
一言で、これぞジャーナリズムと思えるようなとてもよいドキュメンタリーだった。
放送されたタイミングも絶妙だった。番組放送5日後の10日未明(日本時間)、ユネスコは中国が申請した旧日本軍による「南京大虐殺」の関連資料を世界記憶遺産に登録したと発表した。これに対して日本政府は 登録は「極めて遺憾」だとし、中国とユネスコを批判する談話を発表。「断固たる措置をとる」とし、ユネスコへの分担拠出金の凍結や減額を検討する構えを見せているとも伝えられている。
今月2日には、自民党「国際情報検討委員会」委員長の原田義昭・元文部科学副大臣が、「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、わが国はいまや否定しようとしている時にもかかわらず、(中国が)申請しようとするのは承服できない」と発言。(不十分なレベルではあるが)存在自体は渋々ながらも認めている政府見解すら捻じ曲げる問題発言だ。
このような歴史修正主義的な動きが政府レベルで起こっている最中、これに少なからずカウンターを浴びせるタイムリーな内容になったことは間違いないのではないか。
『南京事件/兵士たちの遺言』はBS日テレなどで再放送され、youtubeやdailymotionなどの動画投稿サイトにもアップされている(リンクは貼らない。タイトルで検索すると、簡単に探せるはずだ)。一見の価値ありなので、未見の方々はぜひともご覧になってもらいたい。
今回のNNNドキュメントのような良質で硬派な番組を見るたび、月並みな表現だが、日本のテレビも「捨てたものではない」と思えるのだ。(相)