さるすべり
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しばらく前、天気がいい朝のこと。バスを待っていると、後ろに並んでいた老人ふたりが道路の向こうを指差して「さるすべり、綺麗に咲いてますねえ」と話していた。私もそれまで道路の向こう側をぼーっと眺めていたのだが、その言葉を聞いた瞬間、たしかに白い花が目に入ってきたのだった。(へえ、あれさるすべりっていうんだ)と、途端に風景が立体的になったように感じた。
色々なものの名前を知ることは、見えるものが増えるということなのかもしれない。「さるすべり」と聞いて初めて私にも花が見えた時、その方たちは知っている花の名前が多い分、私とは違った側面でたくさんの景色が見えているんだろうなと気がついた。
自分が好きなものの知識を蓄えることは、自分が好きなものともっと多く出会えることなんだと、そう考えると出会いは自分からも作れるものかもしれないと思った。(理)