広島無償化裁判第9回口頭弁論―差別という点が明確に
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広島無償化裁判第9回口頭弁論が10月28日、広島地方裁判所第302号法廷で開かれ、朝鮮学校保護者や関係者、日本市民、朝鮮学校高校生らが法廷に駆けつけた。
広島での無償化裁判では、広島朝鮮学園と110人の広島朝鮮初中高級学校生徒・卒業生たちが原告となり、「高校無償化」法に基づく指定の義務付けと、元・現生徒たちの学習権を侵害し精神的苦痛を強いたことに対する慰謝料を求めている。
今回の口頭弁論では、原告側が第9・10準備書面を提出した。
第9準備書面ではまず、原告代理人の平田かおり弁護士が、行政処分取消訴訟における主張立証責任について陳述。「法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」と定めている規程13条に適合すると認めるに至らなかったという被告(国)の主張について、その主張立証責任が被告側にあると主張した。
原告である朝鮮学園は、高校無償化制度への申請を行うにあたり、必要な定型的書類はすべて提出したが、その後、文部科学大臣が規程13条を絡め、「不当な支配」がないかを確認するための新たな書類提出を求めた。本来定められていた定型的資料ではなく、追加で文部科学大臣が要求した資料と関連して不指定処分が下されたのであるから、規程13条該当性に関する主張立証責任は当然被告側にある。審査のために必要な資料をすべて保持しているにも関わらず、内容の審議も確認できていない報道等を指摘したうえで「確証が得られない」などと述べるのは、立証責任を果たしたとは言えないと指摘した。
また本書面では、大阪のとある私立学校で5億円の不正流用があったが就学支援金が支給されているようだと指摘。一方で原告朝鮮学園に対しては、運営が適正に行われていないという具体的裏づけが確認できなかったにも関わらず、無償化の対象から外されていることから、これが明らかな差別だと被告側を一蹴した。
第10準備書面では、前回被告が提出した第6準備書面に対し反論。一橋大学の田中宏名誉教授による同等性判断に関する鑑定意見書が証拠として引用された。田中鑑定書では「日本の教育」と「外国の教育」との間で、「同等性」や「相当性」を判断する場合に問題とされるのは、日本と同じ「12年の課程」を修了しているかどうかだけで、学校運営の適正に関する同等性判断は含まれていないとしている。
また、仮に規程13条(適正な学校運営)が適法なものだったとしても、そこで問題とされるのは「財務諸表の作成」「理事会等の開催実績」「所轄庁による処分(直近5年間)」であり、朝鮮学園が適合するに至らなかったという判断は不合理であるとしている。
足立修一弁護団長は口頭で「『朝鮮学園は怪しいから調べる』としているだけでは立証できていない。具体的にどこがどのように怪しいのかを示さないと反論のしようがない。『悪魔の証明』を強いられている」と力を込めた。
裁判終了後に報告会がもたれた。足立弁護士は、今回の口頭弁論で、運営の適正が認められている日本学校で不正流用があったが支援金が打ち切られていないことを原告が証拠として提出したことで、規程13条を理由に国が原告朝鮮学園を不指定処分としたことが差別だという点がかなり明確になったと話した。
広島朝鮮初中高級学校に通う高校2年生の女子生徒は、法廷で闘うことはできないが、当事者である私たちが、学校を守っていくことから逃げず、よそ見せず、将来の自分たちを見据えて、学校の中で勉学や部活動に励んでいきたいと話した。
同校オモニ会の朴陽子会長は、9月12日に開かれた全国オモニ大会を契機に、オモニ会で制作した高校無償化裁判を応援する横断幕について説明した。「在日朝鮮人は生まれた時から差別と闘うという環境に育ってきたが、今回の横断幕を作るにあたって、『暗い』『辛い』というイメージを払拭して全体的に明るく作ろうと一致した」。横断幕には「すべての子供たちに『高校無償化』の適用を! 好きじゃけん朝鮮学校」と書かれ、必ず勝利しようという思いを込めて、雨の後に出る虹が描かれている。「子どもたちに、正しいことを頑張ったら勝利できるということを経験として与えてあげたい」と話し、今後、法廷にたくさんの人が足を運ぶことで裁判を盛り上げて行こうと呼びかけた。
次回の第10回口頭弁論は、2月3日13時半から開かれる。
そこでは今回提出された準備書面に対する被告側の反論がなされる。また、原告側は、合計94人による陳述書・検証申出書・尋問申出書を裁判所に提出する予定だ。(S)