開城工業地区の操業、全面中断へ
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韓国(以下、南)政府は10日、朝鮮(以下、北)南西部、軍事境界線近くに位置する開城工業地区の操業を全面的に中断すると発表した。
撤収作業は翌11日から始まっている。南の統一部は、工業地区を通じて北側に支払われた現金が「核兵器と長距離ミサイルを高度化するのに悪用された」と述べ、今回の措置が北側の核実験や人工衛星の打ち上げへの対抗措置としてとられたものであると明らかにした。南側はこれまで、開城工業団地だけは「南北経済協力の象徴」として制裁の例外としてきたが、今回、その方針の撤回に踏み切った。
開城工業地区は2000年6月の北南首脳会談の合意を受けて造成され、04年に操業開始。南の企業が入居し、北の労働者が働く、北南経済協力事業としてスタートした。昨年11月の時点で韓国企業124社が進出しており、北側の労働者5万4000人あまり、韓国企業関係者800人あまりが働いている。年間生産額は5億ドルを超える。
操業開始から11年。開城工業地区は何度か危機を迎えながらも稼動を続けてきた。2013年3月には北側が米韓合同軍事演習への対応措置として一時閉鎖したが、その後、両者の協議を経て9月から操業が再開された。この際、北と南は「中断の再発を防止し、情勢の影響を受けることなく…工業地区の正常運営を保障すること」に合意している。今回、南側はこの合意を破ったことになる。
中断が長期化する可能性も指摘される中、工業地区に入居する南側企業への打撃は致命的なものになると指摘されている。韓国メディアは、「死刑宣告を受けたに等しい」「会社が存亡の危機に直面する」など工業地区の稼働中断を通告された進出企業の経営者の声を伝えている。工業地区の稼働が全面的に中断され、現地工場の設備や資材、完成品などを回収できなければ、南側の被害額が1兆ウォン(約950億円)に達するという試算も出ている。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/02/11/2016021100754.html
北南関係の「最後の砦」として残っていた開城工業地区の稼動を南側が一方的に中断したことによって、両者をつなぐ糸は完全に切れた。経済的な損失より、こちらのほうが深刻な事態だと言わざるをを得ない。(相)