「あの日」から5年
広告
東日本大震災から5年が過ぎた。
「あの日」、私は家に1人だった。携帯を片手に家を飛び出したが、電話も繋がらないし、メールも届かない。余震が怖くて家にも戻れず、近所をぐるぐる回っていたが、交通機関が停止した影響で家族が一晩帰って来れないと分かり、しかたなく家に戻った。
すぐに避難できるよう靴を履いたまま家に上がり、とりあえずテレビの前で地震速報を見ていたら、あの津波の映像が目に飛び込んだ。衝撃と恐怖で涙が止まらなかった。私が東京で地震を経験したその同じ時間に、まさか被災地でこんな事が…。犠牲者の数がどんどん増えて、1万人を越したあたりから、もう実感がわかなかった。
震災による(関連死含む)死者・行方不明者は2万人を超えたという。でもその2万人は全員違う人間で、それぞれの人生を歩んでいた人たちで、「2万人」と統計に出すだけでは説明がつかない。「1人の死×2万」ということを、人はどこまで想像できるだろうと思う。
家族や友人を失った人は、何人になるのだろう。私にとっては「あの日」だが、大切な人や家、生活を奪われた人たちは、「あの日」から今日までずっと震災と向き合ってきた。同じ5年という期間を過ごしたが全く違う。
東日本大震災を忘れることはないけれど、被災した人々のその後の5年を「どこまで想像できていたか」と聞かれると、答えることができない。「震災を忘れない」とはどういうことなのだろう…。
いつか被災地に行こうと思いながら5年が過ぎてしまった。直接足を運んで現状を見た友人が「絶対、現地を見るべき」と言っていた。必ず行こうと思う。(S)