ウリクルが浮かぶ空間
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「ハングル書芸作品展」に初めて足を運んだ。これまで行ってみたいと思いつつも、時間が合わなかったり気がついたら終わっていたり…。後日、朝鮮新報で紹介されているのを見て惜しい思いをしていた。先週の土曜日にタイミングが合い、ようやく行くことができた。
今年20周年を迎えた同作品展の主催は、「在日本朝鮮文学芸術家同盟(文芸同)」東京の書芸部。ウリマル・ウリクルで書芸をするという原点に立ち返り、今年の作品展タイトルは「정음 正音」(朝鮮の世宗王によって制定された訓民正音から)にしたという。
会場に入ると、さっそく目を引く作品がずらり! さまざまな書体や表現方法があり、独創性にあふれた素敵なものばかりだ。
出展者の年齢層は20代から60代以上と幅広い。正統派な作品のほか、斬新なアイデアで書を楽しむ作品も。作品群を見ながら、「ハングル書芸」というコンテンツに大きな魅力と可能性を感じた。
作品展では毎年テーマを決めて、出展者たちによる合作も発表している。今年は「民族教育」をテーマに作品づくりに取り組んだそう。関東にある朝鮮学校の校歌から校名が入った一節を引用し、一人ひとり書にしたためた。
この日、在廊されていた康貞奈さんに色々とお話を伺ったのも楽しかった。康さんは作品展が始まった当初から出展を続けている。
「母国語があるというのは、祖国があるというのと同じこと。ウリマルだからこそ伝わる感情や情緒があるので、そういうものをここでふんだんに出せたらいいなと思っています」という言葉が印象的だった。
広大だったり、おごそかだったり、上品だったり、伸びやかだったり、可愛らしかったり。作品ごとに形を変えたウリクルたちからは、確かに特別な情緒というか空気感が伝わってきた。たくさんのウリクルが浮かぶ空間を大切に作り続けてきた、出展者たちの静かな情熱も感じ取れた。(理)