ヘイトスピーチ、その後
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5月24日に成立したヘイトスピーチ解消法から、昨日で3ヵ月。
8月22日、「ヘイトスピーチを許さない!」かわさき市民ネットワークが主催する勉強会で話を聞いてきた。「京都府(市)の人種差別撤廃条例を求める活動に学ぶ」と題し、金尚均・龍谷大学教授が講演。金教授は、2009年12月に在特会から罵詈雑言を浴びせられた京都朝鮮第1初級学校の保護者であり、その後、在特会を相手取り、裁判を起こし、最高裁で勝訴を勝ち取った行動力の持ち主だ。刑法の専門家でもあるが、この裁判を通して、人種差別を野放しにする日本の法制度をよりよいものにしようと、発信を続けている。
今まで金教授の話は何度か聞いてきたが、この日も強烈な印象に残った言葉がいくつかあった。
「ゴキブリ朝鮮人」という言葉の裏には、強烈なメッセージがあるということ。
金教授は、この言葉に、「ヘイトスピーチはなぜやってはいけないのか。なぜそれが危険なのか、という正体がある」として、「朝鮮人は、自分たちと違う。人間ではない」という考えのもと、「同じ人間であるにも、その人たちを見下して蔑む。朝鮮人を敵にすり替えて攻撃する」、ひいては500~600万人のユダヤ人を一般市民が虐殺した、かつてのナチスドイツのような社会に向かっていく深刻な問題がはらんでいると話された。
在特会は「殺せ、殺せ、〇〇人」と叫ぶ。自分が「殺すぞ」、とは言わない。
公衆に向かって扇動することが、社会に与える影響についても考えさせられた。
在特会のメンバーには、金教授や私のような40代が多いという。丁度、日本の学校現場で人権教育や被差別部落への啓もうが始まった時期に育った世代が、なぜこのような行動に出ているか、という問題提起も宿題として、メモ。
ヘイト法の成立で、日本政府は人種差別に対して一歩を踏み出したものの、街ではヘイトデモが繰り返されている。東京都知事選では、在特会会長が立候補し、朝鮮学校についてヘイト感情をまき散らした。10万票を取った現実がその影響力を物語っている。
背景には、未だ残る外国人への制度的差別がある。金教授は日本では「差別が差別として認識されない」と指摘したうえで、まずは、被害実態を明らかにし、自治体が人種差別に対して、きちんと対応するよう訴えていく必要性を訴えた。その一つの形が京都府、市に対して有効なヘイトスピーチ対策の推進を求める条例制定の動きだ。差別の実態調査については、弁護士や研究者の皆さんが研究を重ねており、今年6月号の本誌でも発表したが、問題を可視化させる「発信」がもっともっと必要だと痛感した。
それにしても、問題は山積みであることを実感させられた夜だった。ヘイトスピーチの標的になった(今もなっている)、川崎では、市民立法で川崎市人種差別解消条例の制定をめざしている。かれらの罵詈雑言に、差別に心を引き裂かれ、生活を脅かされている人たちが、それでもあきらめず声をあげている。その声の底にある不安と恐怖が消えないのは、この社会がヘイト感情の蔓延を許しているからだ。
一方で地域の暮らす人たちの出会いを紡ぐイベントも目白押しだ。ここに川崎の底力を見る。
明日、27日(土)には川崎朝鮮初級学校で同校創立70周年記念のお祭りが開かれる。
15時からは、子どもワークショップ、体操教室、親子教室、親子ロコモ教室が、17時からはお祭りがスタート!
おいしい焼肉や、自転車、焼肉食事券が当たる抽選会もあるそうだ。ぜひお楽しみください!(瑛)