大阪無償化裁判控訴審始まる
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大阪朝鮮学園が原告となり、先の7月28日に大阪地方裁判所で原告全面勝訴判決が下された高校無償化裁判の控訴審の第1回口頭弁論が12月14日、大阪高裁で行われた。
大阪地裁は、高校授業料無償化・就学支援金支給制度の趣旨である「教育の機会均等」とは無関係な外交的、政治的判断に基づいた規定ハの削除は違法、無効であると断じ、被告国側の不指定処分を取り消し、大阪朝鮮高級学校を無償化の対象に指定することを命じている。
今回、イオ編集部として控訴審の傍聴取材に行くことはできなかったが、裁判支援団体である無償化連絡会・大阪から提供してもらった当日のレポートに基づいて、第1回口頭弁論の内容を本エントリで紹介したい。
この日、控訴人(国側)からは控訴状と控訴理由書が提出され、被控訴人(朝鮮学園側)からは答弁書が提出された。
まず、控訴人側の弁護士が控訴理由書の要旨について意見陳述を行った。国側弁護士は「大阪朝鮮高級学校が就学支援金に関する指定の要件を満たすとは認められないとした文科大臣の判断が『裁量権の逸脱』または『濫用』したものだとし、またいわゆる『ハの規定』を削除したことが制度の趣旨を逸脱して無効だとした原判決の判断が誤りである」とした。国側は、大阪朝鮮高級学校が指定の要件を満たすとは認められないとした文科大臣の判断に誤りがないと主張。原判決の朝鮮学校に対する認識と評価について、「一般社会における健全な常識を大きく逸脱する認識の誤り」が、本件規定13条適合性が認められるとした「誤った判断」に「直接的に影響を及ぼした」と主張した。加えて、規定ハの削除については、「削除するに至る基本的な事実経過に照らしても、ハの削除は文部科学省内でもかねてからの懸案事項であったので、文科大臣の外交的、政治的意見によるものでないことは明らか」だと断言した。
一方、朝鮮学園側弁護団による陳述は、国際人権法や教育基本法の理念に照らし、規定13条適合性を都合よく解釈、適用している国の誤りを指摘した。また、国が要件としてあげた「(支給した就学支援金が)流出する恐れがないこと」について、「財務諸表」の提出のみで「確実な充当」が認められている他の外国人学校を例に、法の差別的な適用を指摘。いわゆる「不当な支配」に関して、国が抽象的な文言に終始し、偏った情報をもとに恣意的に「反社会的な活動」や「密接な関連」などを作り上げていると断じ、国が証拠として採用した新聞報道や公安調査庁による情報など具体的な実例を列挙した。そのうえで、国の主張が憲法や国際人権法、教育基本法を捻じ曲げて解釈し、朝鮮学校に対して予断と偏見の目で見ており、法の趣旨である「教育の機会均等」という最も重要な視点が欠けていると指摘した。
このたび学園側は元文部科学事務次官・前川喜平氏の陳述書を法廷に提出。同陳述書は、控訴審で国側弁護人が「規定ハ」の削除が文科省内でかねてからの懸案事項であったと主張した陳述の内容を覆すものとなった。前川陳述書は、「高校無償化法制定当時、文部科学省内には朝鮮学校を対象として指定しないとする議論は存在せず、指定対象になるということは関係者の共通認識であった」と指摘。「検討会議において『適正な学校運営』を議論する中で教育基本法の条項への抵触が問題とされたことは一度もなかった」ことや、「審査の継続中、高校教育改革プロジェクトチーム内において規定ハを削除する『省令改正』の準備を進めていた」という主張についても、「当時の上司である自分の記憶にそのような議論などなかった」と明確に否定した。そのうえで朝鮮学園側弁護団は、「教育の機会均等」とは無関係な外交的、政治的判断に基づいて規定ハを削除したことの違法性を認めて無効とした原判決判断に誤りはないとのべた。
最後に、丹羽雅雄弁護団長が総括的な陳述を行った。丹羽弁護士は「本件控訴審において十分に理解されるべき本質的事項」と題して、以下の5つの問題を裁判官に提起した。
①この裁判は日本国家による「植民地支配」という歴史的事実への深い洞察なしに判断されるべきでない、②この裁判は朝鮮学校で学ぶ子どもたちの教育への権利に関わる裁判である、③この裁判は「高校無償化」法の立法趣旨に則って判断されべきである、④第2次安倍政権後、朝鮮学校で学ぶ生徒たちに対して「高校無償化」制度から排除する意図をもって不指定処分に至った経緯を十分に理解する必要がある、⑤不指定処分によって、朝鮮学校で学ぶ子どもたちの等しく教育を受ける権利が侵害され、差別を生起させ、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを引き起こす原因となっている。
控訴審第2回口頭弁論は、2018年2月14日(水)、15時から大阪高裁で行われる。
また、大阪補助金裁判の控訴審が12月6日の第2回口頭弁論をもって結審した。判決言い渡しは来年3月20日の15時から大阪高裁で行われる。(相)