ついに結審! ー愛知無償化裁判第26回口頭弁論
広告
愛知無償化裁判の第26回口頭弁論が2017年12月20日に行われ、学校関係者、同胞、日本市民など約260人が傍聴券を求めて列をなしました。愛知朝高生が原告となって提訴した2013年1月から約5年。この日は結審を迎えるとあって、愛知朝高の全在学生らも名古屋地裁に駆けつけました。
今回、原告側は最終準備書面と最終準備書面の補足となる書面を、被告側は第10準備書面と最終準備書面を提出。はじめに法廷で朝鮮学校の日常生活を記録したDVDが上映されたあと、原告側弁護団が書面の要旨を陳述しました。
前回の期日以降、弁護団による検証(裁判官が実際に朝鮮学校へ足を運ぶこと)の申出が却下されたため、原告側は映像制作に尽力。映画監督である朴英二さんの協力も得て、愛知朝高生たちの学校生活を約15分の映像にまとめました。クラブごとの朝練、さまざまな授業のようす、食堂での昼食、運動会の練習、生徒会活動など、朝鮮学校でいきいきと学ぶ生徒たちの飾らない姿が映し出され、傍聴席からは自然と笑い声が上がる場面もありました。
続いて、弁護団の裵明玉弁護士と内河惠一弁護団長が要旨を陳述しました。裵弁護士は、これまでの事実関係を時系列にまとめ、被告の主張の矛盾点と不当性について改めて強く訴えました。途中、原告らの言葉を引用した部分で、ぐっと涙をこらえる姿も見られました。
内河弁護団長も補足として発言。「この事件は、間違いなく在日朝鮮人への偏見に満ちた人権侵害の問題。被告による姑息な法解釈のこじつけには、一人の日本人として心から怒りを覚えずにはいられない。司法が国の方向性を示唆することは大切。裁判官には、どうか一人ひとりの訴えに耳を傾け、適正な判断をしてもらいたい」と、自身の思いを静かに伝えました。
閉廷後に行われた報告集会では、裵弁護士が裁判の進行状況を解説しました。被告は10月に、新たな準備書面と156にも及ぶ証拠を提出したそうです。書面では▼朝鮮学校の教育内容が教育基本法の理念に沿っていない、▼朝鮮学校と密接な関わりがある総聯は反社会的な活動を行う側面がある―などの理由から、不指定処分は不当ではないという暴論を展開してきたといいます。60年代の事件まで持ち出し、「総聯関係者には犯罪者がいる」などと主張しました。これに対して弁護団は、200以上の証拠を持って反論。被告の主張の根拠の薄弱さや矛盾点を一つひとつ指摘しました。
また、弁護団が12月に提出した前川喜平前文科省事務次官の陳述書に対し、被告側が改めて反論を申し出たことも報告されました。当初、被告側は前川氏の陳述書を却下するよう裁判所に求めていましたが、それが叶わなかったため、結審を迎えたにも関わらず「事実上の反論」をしたいと申し出たのです。裵弁護士は、「内容によってはこちらもさらに反論を考えている。少しスッキリしない部分もあるが、しっかり対策を取って判決の日を迎えたい」とのべました。
この日は、京都から中村一成さんも駆けつけました。
「差別の問題を裁判でたたかうことは本当に大変。裁判という制約の多い枠組みの中で、自分たちの正当性を語り切り、当たり前の権利を獲得するために尽力してきた弁護団、支援者、そして学生たちに敬意を表したい。前回来た時も感じたが、名古屋は法廷や報告集会の空気が違っていた。自由や平等といった、本来当たり前に守られるべきである人間の尊厳を求める『私』が『私たち』になる、そういう空間ができたと思う。これは一つの展望だし、裁判官たちがどんな判決を書こうとも、本当に勝ったと私は感じた。あるべき社会、世界の姿を自分たちの手で描き出すのが差別とたたかうということ。『私たち』が目指す社会のためにこれからも一緒にたたかい、喜びあって進んでいってほしい」
あたたかく、強いメッセージに会場からは大きな拍手が上がりました。愛知無償化裁判の判決言い渡しは2018年4月27日(金)14:00から、名古屋地裁で行われます。(理)