大成功だった同胞歌劇「埼玉やきとり物語」
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1月28日の日曜日、埼玉の彩の国さいたま芸術劇場に同胞歌劇「埼玉やきとり物語」を観に行きました。企画・製作したのは、埼玉の同胞芸術愛好家たちが組織するオルサ芸術協会です。オルサは06年に結成された後、歌、舞踊、楽器演奏によるアンサンブル公演を2年に1度のペースで行ってきましたが、より次元の高い総合芸術として歌劇公演を行うことを3年前に決めたそうです。昨年のこの時期に行う予定でしたが、1年間の延期の末についに実現させたのでした。
公演は素晴らしいの一言でした。金剛山歌劇団や朝鮮歌舞団の経験者もいましたが、出演者の多くは素人の人たち。しかし、演技も歌も演奏も、どれも素晴らしく「プロの舞台」でした。仕事を抱えるなか練習に励み、みなが心を一つに作り上げてきたものです。いろいろと紆余曲折があったといいますが、埼玉の芸術愛好家たち、同胞社会の底力を十二分に発揮した舞台となっていました。
午後3時半の開演でしたが、3時間前には観客が集まり始め、開始前には会場前に長蛇の列ができていました。
物語の舞台は同胞が経営する東松山のやきとり屋「オンヘヤ」。実際にある有名店をモデルにしています。主人公のポンスンは、早くに夫を亡くし、苦労の中で舅とお店を切り盛りしながら一人娘のヨンヒを育ててきました。ヨンヒは近くにある日本学校ではなく片道2時間もかかる朝鮮学校に入学しました。亡き夫との約束、そしてヨンヒを立派な朝鮮人に育てたいという思いからです。店に集った常連の同胞たちが入学を祝う場面から物語りは始まります。
登下校の途中で事件が起こります。帰宅途中、疲れて電車の中で寝てしまい終点まで乗り過ごしてしまうヨンヒ。これは子どもを朝鮮学校に送る多くの同胞家庭で経験のあることでしょう。私の息子も寝過ごして遠くまで行ったことがあります。またある日は暴漢に襲われ、一緒に通う中級部の女子生徒がチマチョゴリの制服を切られ、ヨンヒも突き飛ばされてしまいます。
心に傷を負ったヨンヒはこう言います。「朝鮮学校は好きだけど通学が怖い」。
事件を受けて、朝鮮学校に通う子どもたちを守るために立ち上がる同胞たち。……
ストーリーはこれくらいにとどめておきますが、弾圧や差別の中でも明るく楽天的に生きてきた同胞たち、同胞社会の中心には朝鮮学校があり、いつまでも民族教育を守っていくのだという同胞たちの姿が描かれます。
劇中で歌われる歌には朝鮮語と日本語の字幕がつきましたが、セリフはすべて朝鮮語です。日本人も観に来ていましたが、どれほど内容が把握できたのか、少し心配しました。DVDも発売されるとのことですが、字幕もつけて多くの人たちに観てほしいと思いました。
「埼玉やきとり物語」は埼玉朝鮮初中級学校のチャリティー公演として行われました。(k)