結審先送り/大阪無償化裁判控訴審 第2回口頭弁論
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高校無償化裁判の一審で勝訴判決を勝ち取った大阪で、昨日、控訴審の第2回口頭弁論が行われた。
同胞や日本市民、大阪朝鮮高校生徒など135人が傍聴席を求め列をなし、81の傍聴席が埋まった。
前回の期日後、控訴人(国側)からは第1準備書面が提出された。内容は、高校無償化法などの具体的な法律よりも、主に“我々日本国民は~”ではじまる教育基本法の抽象的な理念を持ち出したもので、これに朝鮮学校は沿っていないため審査基準には適合しないと結論付けるようなものだった。
弁護団はこれに対し、一部誤解されてはいけない主張などについてまとめた8ページほどの準備書面を提出し、引き続き結審を求めた。
書面では、国側が、教育基本法が外国人学校にも全面的に適用されることを前提に主張を展開していることについて、「我々日本国民は」「国家をさらに発展させるため」「わが国の未来を切り開く教育の基本を確立するため」といったことが書かれた前文からすでに分かるように、教育基本法が「日本国民の日本国家を発展させるための法律」であり、そもそも外国人児童や生徒が通う外国人学校に全面的に適用されることを想定したものではないとした。
また、教育基本法では「学問の自由の尊重」が強調されており、学校現場で教師の教育活動を縛ることができると解釈することはできないとした。
教育基本法を持ち出し抽象的な論理を立てる国のおかしな主張に反論し、中には明らかに間違いに基づいた主張もあったためそれも指摘をした。
さらにもう一点、雑誌『法学セミナー』に掲載された、2人の研究者による論文についても言及した。
高校無償化制度からの朝鮮高校除外問題について、各地裁判決などを分析した論文で、2つとも大阪の一審判決が最も説得力があり妥当であること、高裁でもしっかりとした判断をすべきだという方向で書かれた論文だ。広島や東京での一審判決が妥当だという論文はどこにもないことにも触れながら、学園側は大阪での一審判決が控訴審で維持されるべきだと主張した。
この日の法廷では、提出書面などの確認が行われ、特に陳述などは行われなかったが、裁判官から学園側と国側の双方に、一審でも議論してきた文科大臣の判断の「裁量権」についてそれぞれ補充して主張する点があるかと質問する場面があった。国側はこれに関する書面の提出を希望、学園側は議論はし尽くしたとして審議の終結を希望した。
合議を行うため裁判官らが一時退室。7~8分後に戻り、国側の意向に配慮し次回もう一度期日を取ることが伝えられた。
閉廷後の報告会でははじめに、金英哲弁護士がこの間の書面のやりとりについて説明した。期日が延びたことについては、「裁判官に判決を書くための準備がまだできてないのではないか。期日がまだ行われるため、こちらもその間に一審で主張した中心的な内容をもう一度主張していく」と話した。
続いて丹羽弁護団長が発言し、文部科学大臣に「裁量はない」と言った全うな一審判決を、高裁がどう書くかが注目されていると説明した。
「裁量権が無いと書くか、あっても限定的だとするか、もしくは広島や東京の判決のように広範な裁量権を認めてしまうか、今攻防戦をしています。一審での主張を整理し、一審判決も踏まえ、高裁で裁判官がこの判決に従うよう主張していく。仮に『裁量はない』とまで言わなくても、広範な裁量というのはありえない」。
論理的な主張はもちろん、教育への介入である「広範な裁量」を容認することがいかに危険なことなのかということをアピールしていきたいとした。
バレンタインデーの日に行われたこの日の裁判。報告会では大阪朝高オモニ会から弁護団へチョコレートがプレゼントされ、突然のサプライズに会場の雰囲気が和んだ。
弁護団や学園理事長から次回後の裁判への決意が語られ、報告会が終了した。
次回、控訴審の第3回口頭弁論は4月27日(金)15時から。おそらくこれが結審となる見通しだ。(S)