襲撃事件の日の金曜行動~もう一度、声を聞く
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東京・千代田区の朝鮮総聯中央本部に銃弾が撃ち込まれた2月23日は金曜日だった。
この日も例にもれず、文部科学省前では朝鮮高校生、保護者、日本市民による金曜行動が行われ、3月4日に卒業を控えた高3はじめ、約400人の東京朝高生たちが訴えを続けた。
「私たちの訴えを聞き流さないで…」。高校生たちの訴えはいつも現状を鋭くえぐり、最後は必ず、決意で結ばれる。文科省の差別に怒り、胸を痛めながらも、最後は希望ある未来を作ると心を大きく開くのだ。
かれらは、15歳、16歳、17歳、18歳…。まだまだ親や大人に守られるべき子どもだ。
その子どもたちが寒空の中で訴え続ける姿は、何度見ても胸が押しつぶれそうになる。高校生たちは、この国で「絶対的な権力」を握っている官僚や大臣に訴えを続けている。いつまで、こんなことをさせなくてはならないのだろうか。
日本各地の5ヵ所で行われている高校無償化裁判で国側は、総聯と朝鮮学校、朝鮮民主主義人民共和国と朝鮮学校の関係を過剰に問題視し、ありとあらゆる資料を積み上げている。裁判の場でも国は、朝鮮学校叩き、朝鮮憎しの世論を増幅させ、子どもたちを朝鮮制裁の具としてさらし続けているのだ。
もういいかげん、国民を代表する国家が、ヘイトスピーチを撒き散らすような、下劣な真似を、やめてほしい。
23日の銃撃事件は、在日朝鮮人をねらったヘイトクライムだった。
私は安倍首相はじめ、国とトップに「許されない差別」と立場表明してほしかった。
それだけでも、どんなに心が休まっただろうか。
生まれ育った川崎桜本が人種差別主義者たちに襲撃されたとき、「私の心は死にました」と言ったチェ・カンイジャさんの言葉を思いだす。
私たちは、「いつ殺されてもおかしくない存在」に貶められてしまった。こんなことが許されていいはずがない。
金曜行動では、襲撃事件に胸を痛める高校生の訴えもあった。3月4日に卒業を迎える朝高生や後輩たちの声を、心にとどめる思いで、発言を整理した。(瑛)
●男子生徒「文科省の皆さん、理解できますか?」
去年の9月13日、こみ上げる期待を胸に高校無償化裁判に挑みました。しかしあなた方日本政府の10秒も満たない発言は、われわれに不当判決を言い渡しました。その時の私たちの怒りや絶望、悲しみの心情がどれだけ大きかったか、あなたたちには、理解できますか?
あなた方の不当な差別によって、私たちの生活はますます苦しくなっています。ですが私たちは決してあきらめません。こんな差別で在日同胞はつぶれたりなんかしません。ぼくたち高校3年生は卒業した後も権利を勝ちとるまで叫び続けます。正義がある限り、勝利のために私たちは何度でも立ちあがり続けます。
●男子生徒「後輩たちのために、来ました」
文科省のみなさん、僕は朝鮮学校に通う高校3年生です。ぼくたちは一週間でこの学校を卒業します。そんななかでも声をあげているのは、他でもない後輩たちのため、そして一人の人間として、未だに朝鮮学校が全員、無償化から外されていることがあまりにも理不尽で間違っていると思うからです。
規定から外されているからとか、そういう理屈ではなく、あなたたちは一人の人間として、朝鮮学校だけが対象にならないのが、おかしいと思わないのでしょうか。そう思わないのなら、平等とはいったい何でしょうか。この国では差別はなくならないのでしょうか。僕たちは、ただ安心して生まれ育ったこの国で勉学に励みたいだけ。何の心配もなく学校に通いたいだけです。
(敗訴)判決が出たからと言って、あきらめるぼくらではありません。どんなに厳しい状況でも屈せず、この金曜行動を続けていくでしょう。
これ以上、僕らの声を聞き流さないでください。
これ以上、見てみぬふりをしないでください。
これ以上、ぼくたちの学ぶ権利を奪わないでください。
日本に住む外国人は、日本人にならなくては、権利を与えてもらえないのですか。自分の国の歴史を学ぶことは朝鮮人の子どもたちだけ、許されないのでしょうか?僕たちは権利を勝ちとるその日まで叫び続けます。高校無償化を即時適用せよ。
●女子生徒「朝鮮学校を目の前で取り壊された祖父」
文科省の皆さん、私たちはなぜ金曜日にここで叫ぶのでしょうか。
私の祖父は目の前で朝鮮学校を取り壊されました。その後、祖父は自力で朝鮮語を学び朝鮮大学校の教授として外国語を教えながら、二度と差別が起きることないよう、本や資料を書き国際社会人として活躍しています。そんな祖父の後ろ姿を見て育った私が闘いを続けています。
国際化が進み、たくさんの人々が住む日本、2020年に平和の祭典であるオリンピックが開催される日本は、今どんな状況でしょうか。見た目ではなく、内面を見た時、ある特定の民族に当たり前の権利を認めない、こんな国なのではないでしょうか。
私たちはなぜここで叫ぶのでしょうか。
それは新しい権利が欲しいのではなく、あたり前の権利を得るためです。日本政府は朝鮮学校に高校無償化を適用せよ。
●女子生徒「私たちの存在を認めてほしいだけ」
文科省の皆さん、高校2年生です。ひとつ質問があります。2017年9月13日、私たちが思いもしない不当判決に涙を流し、心を震わせ、それでも闘うと奮い立ち、誓ったその日、あなたたちは判決をどう受け止めましたか? 当たり前の判決だと思っていますか? 司法に感謝していますか?
私はあの日、ものの数秒で終わった判決を聞き、悲しみよりも、怒りが湧きました。この闘いは在日朝鮮人だけのものではない。そこには数多くの日本の方々の支援がある。あなた方は、自身の国民さえも否定していることになるのですよ。
適当な資料提出から見える裁判に対するやる気のなさ…。裁判に全力で挑んだ私たちではなく、国側についた裁判所、もとい司法はどれだけ腐りきっているのですか。法律を覆す国を誰も咎めない状況に何も感じていない…。
もう一度、あなたたちがおかした過ちを考えてください。あなたたちの行動ひとつひとつがどれだけ影響を与えているのかを。
私たちはお金が欲しいのではない。私たちの存在を認めてほしいだけ。私たちはあなたたちと同じ人間です。毎週金曜日、この地に足を運ぶことが、学生がすべき日常ではなく非日常ということを忘れないでください。
数年後、教科書には不当判決という判決が載るでしょう。私たちはこの事実を逆転させてみせます。高校無償化を即時適用せよ!
●金栄愛・東京中高オモニ会会長「文部官僚の方々、子どもたちのために、汗流して」
文科省のみなさん、忘れもしません。9月13日の不当判決。本来なら勝利をおさめ、歓喜の集会になるはずが、決起集会になった。あなたたちはどう思いましたか?
私は10秒足らずの判決を聞いて、立ちあがることができなかった。原告のアボジ、オモニたちがどんな思いで原告に立ってくれたのか。それを思うと、力が抜けてしまいました。しかし、裁判所の外の熱気と怒号と、「また頑張ろう」という同胞たちの声を聞き、もう一度自身を振るいたたせました。
今、平和の祭典のオリンピックが開かれています。北と南が手と手をとりあって仲よくしようとしている。歴史の真実を日本の子どもたちに教えてあげてください。
お互いを認め、尊重しあう、手と手をとりあう…。
文部官僚の方々、子どもたちのために汗を流してください。今日は3月4日に朝高を卒業してしまう学生たちも駆け付けました。
子どもたちに明るい未来を!
全国の朝鮮学校が無償化の対象になるよう、ともに立ち上がりましょう。