画集《永遠のウリハッキョ》
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2018年度で校舎を移転することになった東大阪朝鮮中級学校(以下、東中)。
本校は創立57年の間に、9900余名の卒業生を送り出しました。私もその内のひとりでもあります。
先週、東中の美術教員からイオ編集部宛てに、画集《永遠のウリハッキョ》が送られてきました。
この画集は、東中の全校生徒による校内風景画と文章を掲載したものです。
3年間、この校舎で青春を捧げた身としては、移転すると聞いてとてもさみしく、
慣れ親しんだ思い出の場所がなくなってしまうという悲しみは拭いきれません。
画集では、生徒たちがそれぞれ思い出深かった校内を描いています。
休み時間、友達とお喋りをして過ごした「廊下」「階段」、笑い合い時には涙し喧嘩もしながら汗を流してきた「部室」、
生徒たちが乗ってきた自転車がずらりと並んだ「駐輪場」…。
他にも教室や運動場、自動販売機など、懐かしい場所ばかり。
中でも「冷水器」が多かったように思えます。
これを描いた生徒たちの文章を読んでみると、「夏場とても役立った」「友達とここでお喋りした」
「どの学年もここに来て水を飲める、誰でも来られる場所」「朝高に持っていきたい」など…、一部の生徒に絶大なる支持を得ていたようです。
生徒たちが描いた絵を見ていると、自身もあの場所でこんなことあったな…と思い出が色々と蘇ってきました。
ここでエピソードをひとつ…。
中1の頃、日曜の部活を終え帰宅しようと下駄箱へ向かうと、玄関付近で地べたに座っている男性が。何やら見知った背中。
そこには、私の父が野球のユニフォーム姿で背中を丸くして座っていました。
その日は運動場で草野球の試合をしていて、父もメンバーの中の一人でした。
「アボジ?何してるん?」
そう尋ねると、振り返った父の目と指は、ぼっこりと腫れ上がっていました。
何でも、バッターが打ったボールが守備をしていた父の目の前で跳ね、顔面と指を直撃したとのこと。
その腫れあがった目としょんぼりとした父の背中は今でも忘れられません。
時々、この話は家族の間で話題となり、当時を懐かしんでいます。
画集のあとがきには、「自分たちのルーツに誇りを持ち、朝鮮人としての尊厳を育むウリハッキョは、在日1世、2世たちの熱い思いの詰まった希望の象徴であり、度重なる差別の中でも守り抜いてきた歴代保護者達の愛情あふれる宝物でした」
「ヘイトの嵐が吹き荒れるこの社会の中でも、たくさんの同胞たちの愛と私たちを応援してくださる日本の皆様の温かい協力のもと、今を生きる生徒たちの感性が息づく画集に仕上がりました」と記してあります。
今のかれ・かのじょたちにしか描けない「力強さ」「素朴さ」「繊細さ」-。
見て、感じて、学んできた「宝物」が、ぎっしりと大胆に表現されています。
とてもあたたかく、たくさんの愛が詰まった画集です。(麗)