墓前で接した首脳会談
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6月12日、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国間の史上初となる首脳会談がシンガポールで開かれた。
仕事柄、このような大きな政治的イベントがあった際はテレビモニター(あるいはパソコン)にかじりつくか、「街の声を拾う」的な取材に出かけることが多い。今から11年前の2007年10月、2度目の北南首脳会談が行われた際、某新聞で朝鮮半島問題を担当していた私は職場に備え付けられたテレビ画面とデスクのノートパソコン画面を交互に見ながら、平壌から送られてくる記事と写真をキャッチする作業に没入していた。今年4月27日の北南首脳会談の時は近畿地方に出張し、パブリックビューイングや祝賀会の会場、商店街などを回りながら、在日同胞の声を取材した。
そして今回の歴史的な朝米首脳会談がシンガポールで行われていた同時刻、私は職場や取材の現場ではなく、祖母と父が眠る墓の前にいた。
この日は祖母の命日。昨年6月12日に96歳で亡くなった祖母の一周忌法要に参加した。
家族、親戚一同が集まった場の話題は、亡き祖母の思い出と急進展する最近の朝鮮半島情勢。当然ながら、同時刻に行われていた朝米首脳会談も話題にのぼった。
家族史と首脳会談。一見、何の関係もなさそうだが、年老いた叔父、叔母が話す家族史をそばで聞きながら、私の家族が歩んできた歴史は朝鮮半島の近現代史と分かちがたく結びついているということをあらためて実感した。
祖母がもし生きていたら、朝米両首脳の握手を見て何と言っただろうか―。
祖母の命日と首脳会談の日程が重なったのはもちろんまったくの偶然なのだが、祖母がもたらしてくれたこの偶然に感謝した。(相)