オンマごころ
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日本各地の子育てサークルを紹介する連載「この街のオンマオリニサークル」。企画を担当するようになってからこれまで6つのサークルを訪ねたが、どこも創意工夫に溢れていて楽しくあたたかい空間だった。
今回は福岡県小倉支部で定期的に開催されている「たんぽぽクラブ」にお邪魔した(誌面の都合上8月号はKyc journalともに休載し、9月号で紹介します)。
この日の内容は「ポジャギアート教室」。ポジャギ(보자기)とは、ものを包んだり覆ったりする時に使う布のことで、日本でいう風呂敷に当たる。包み方には様々な種類があり、結び目を工夫すると上の写真のように印象がグンと華やぐ。韓国のチョゴリ屋さんで働いた経験のある同胞講師を招き、基本の包み方・結び方をレクチャーしてもらっていた。
「ではまず、好きな色のポジャギを選んでください」
なめらかな質感の生地に、優しくも鮮やかな色合い。表と裏で色が違い、参加したオンマたちはしばらく悩んだ末にそれぞれのポジャギを選んだ。
「自分の子どもが女の子だったらピンク系のポジャギを選ぶ人が多いんですよ。男の子だったら青系とか。女の子と男の子がいる場合は、ピンク系と青系が表裏のものを選んだり。不思議とそういう人は結構います」
講師の言葉に互いの手元を確認するオンマたち。
「あっ、私もだ!」
「オンニ男の子ですもんね」
「うちも男と女! 本当だ~」
そんな中、注目されたのはサークル責任者のオンマ。「あれ、男の子?」「男の子よ~」と言葉が交わされ笑いが起きる。責任者のオンマは青系のポジャギを選んでいたが、雰囲気的にどうやら娘さんがいるようだ。
「いや、うちの子は最近ピンク系を卒業してこういう色が好きなんよ。つい子どもが好きな色で選んじゃうね」。
サラッと過ぎていった何気ない一言だったが、無性に心に残った。
男の子だから女の子だからというより、「あの子は…」と選ぶ色。なによりも、その場にはいないのに子どもが基準になっていることに驚いた(子育てサークルと銘打っているが、この日は純粋にオンマたちのリフレッシュと交流の場だった)。
「あー、オンマっていうのは、好きな(自由に、という意味)ものを選ぶ時にも子どもの顔が浮かぶのかなあ」と、ちょっとジーンとした。もし私がその時ポジャギを選ぶ立場だったら、自分以外の誰かのことを自然に考えたりしただろうか?
自分のオモニもなにかを選んだりする時に、そうやって私や弟のことを思い浮かべてくれていたんだろうか。なぜか余韻に浸りたく、帰りの飛行機の中でも責任者のオンマの言葉を何度か反芻していると、「子どもって自分がいないところでも愛情を向けられている存在なのかな」と気づいた。
もしかしたら私は、責任者のオンマの言葉に「子ども」として反応して嬉しかったのかもしれない。取材中、当のオンマ(10歳上)から「オンニ(お姉さん)」と呼ばれるというまさかの出来事もあったが…。
すでに子どもがいる同級生も多い。きっと、オンマではない私には分からない種類の気持ちを知っているんだろう。「子どもを持つ」ことの不思議さについて、いろいろな思いを巡らせた。(理)