ビビンバネットが企画、神奈川中高で関東大震災映画の上映会
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昨日、8月28日にビビンバネット(神奈川朝鮮学校と多文化共生を考える会)が主催し、企画した「共に学ぶ」映画鑑賞会が、神奈川朝鮮中高級学校で行われた。ここに神奈川朝高生と同ネットの日本市民らが参加し、呉充功監督(63)の映画「隠された爪跡 関東大震災朝鮮人虐殺記録映画」を鑑賞し、グループで意見交換をした。
神奈川県の多文化共生を目指し、朝鮮学校支援などさまざまな活動を行う、同ネットメンバーの丸谷士都子さんは冒頭挨拶で朝鮮の歴史の勉強を行ったり、朝鮮学校の授業を参観した活動を紹介しながら、「直接交流することで、関東大震災前に生徒たちも、過去について学び、未来に向けてなにができるか日本市民と共に考える機会になれば」と話した。
はじめに映画「隠された爪跡 関東大震災朝鮮人虐殺記録映画」が上映された。
本作は、大井町のホルモン焼肉店主のアボジ・曺仁承さんの経験を生々しく伝える。慶尚道の貧しい農村出身のアボジは、関東大震災前年の22歳に東京へわたる。その一年後に震災がおき、従兄が殺され、自らも傷害を受ける。
このようなアボジの経験と、当時虐殺を目撃した日本の老人の証言、荒川の河川敷で行われた関東大震災朝鮮人被害者の遺骨発掘、呉監督が自ら虐殺の土地を訪ね、話しを聞く本作は貴重な記録ドキュメンタリーだ。
映画が終わると、呉監督の講演が行われた。
両親が植民地時代に日本へわたってきた、2世の呉監督は映画製作時のエピソードを詳細に話しながら、関東大震災朝鮮人虐殺の詳細な事実、撮影過程の被害者の証言など、朝高生にわかりやすく、笑いも交えながら講演した。
その後、神奈川朝高生と同ネットの日本市民を交えたグループトークが行われた。
12組のグループで行われた、トークでは映画の感想、日本社会の現状などさまざまな意見が飛び交った。
高3の女子生徒は「関東大震災は授業でも習ったが、今回初めて映画を観て、デマで虐殺されたという事実が悲しかった。今でも目に見えない差別が日本社会にあるなかで、昔と今は根本的な部分は変わっていないんだ」と話した。
また、高1の女子生徒は「東京都知事が今年も関東大震災朝鮮人虐殺の追悼文を送らないというニュースをみて、95年前の事実を亡くそうとしていて怒りを感じる。映画を観て、朝鮮人が人間以下の扱いをされてきたことを忘れてはいけないと思った」と感想をのべた。
日本市民は「罪もない朝鮮人が虐殺され、なぜこうなったのかを考えなければならない。大虐殺は昔のことではない。歴史の事実をしっかりとらえて、みつめていきたい」と話した。
他にも、日本政府の差別や日本社会の歴史認識、日本の市民の方との交流の重要性など活発な議論が行われた。
最後に呉監督は、「関東大震災時の流言飛語は今の時代のヘイトスピーチとなんら変わりない。この日本社会の現状を変えるためにも、このような地域の交流は大切だ。地域で仲良く、頑張っていきましょうと締めくくった」。
会の終了後、呉監督に話しを聞いた。呉監督は、「在日朝鮮人社会で世代交代が進むなか、関東大震災の朝鮮人虐殺をどう伝えていくかが問われる。これは民族の歴史であり、在日朝鮮人の歴史である。在日朝鮮人が先頭に立って、遺族の捜索、遺骨の発掘運動を進めていかなければならない」と話してくれた。
現在、呉監督は30年ぶりに3作目となる、記録映画の撮影を行っている。第3作は韓国に住む朝鮮人犠牲者の遺族に焦点をあてている。そのため、韓国でも上映会を開き、遺族に名乗り出てくれるよう呼びかけた。地道な活動を重ね、これまでに10人の遺族を探し出している。
9月1日には関東大震災朝鮮人虐殺から95年を迎える。
東京都の小池百合子知事が、毎年9月1日に横網町公園(東京都墨田区)で営まれる関東大震災時に虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典に、昨年に引き続いて今年も追悼文を送らない方針だ。その理由に、「すべての犠牲者に哀悼の意を示しており、個別の形での追悼文は控える」としている。関東大震災の被災者と、国家権力である軍と警察を動員し、人の手によって虐殺された朝鮮人被害者を同列に扱うべきではない。(全)