九州無償化裁判、結審! 判決は来年春
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9月20日、九州無償化裁判の第20回口頭弁論が開かれ、県内同胞、九州朝鮮中高級学校の生徒、日本市民、また釜山からの支援者などが福岡地裁小倉支部に駆けつけた。弁論が行われる203号法廷は定員50人弱ほどの小さな部屋。少ない傍聴券を求めて200人近くが列をなした。
今回は原告側が準備書面27、28(最終準備書面)を、被告側も最後の書面を提出。法廷ではまず、無償化弁護団の服部弘昭弁護団長が準備書面の概要について意見陳述した。
服部弁護団長は、朝鮮高校が無償化法の規程13条(学校運営の適正性)に適合すると認めるに至らないと判断したのは下村文部科学大臣であり、本来それを客観的に判断するはずだった審査会の結論を経ていないと指摘。
―審査会では、不指定の結論は出ていない。そうすると、本件不指定処分は、本件規程13条の適合・不適合に関係なく、規則ハ号削除によりなされたことは明らかである―(準備書面28より)
そして、規則ハ号は下村文科大臣の政治外交的な発言を受けたあとに削除されたとしつつ、「これは無償化法が想定していない他事考慮であり、被告の裁量を逸脱・濫用したものであるのは明らかである。したがって、本件不指定処分は違法である」と強調した。
服部弁護団長は他にも、朝鮮高校を不指定処分としたことは国際人権A規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約。13条では教育の権利などについて定められている)や人種差別撤廃条約、児童権利条約といった国際人権諸条約だけでなく日本国憲法にも違反するとのべた。
また最後に、生徒たちが民族教育の権利に対する侵害や精神的苦痛を受けたことはもちろん、経済的不利益も受けていることを改めて訴えた。
―高校無償化は、公立学校の場合は文字通り無償化であるが、それ以外の学校については、「就学支援金」として学生一人あたり、9,900円/月が学校に支給されるという制度である。すなわち、原告らが朝鮮学校に最大3年間進学していることに照らせば、原告らは就学支援金を最大3年間受け取ることができない立場にあったのだから、朝鮮学校以外の高校生に比べて、最大356,400円(9,900円×12か月×3年間)の経済的負担を負っていることになる。さらに、兄弟がいればその不利益が大きくなることは言うまでもない―(準備書面28より)
準備書面27では、「原告らの家庭では3人兄弟や4人兄弟全員が朝鮮学校に進学している場合もある。(中略)きわめて重い経済的負担を負っていることになる」と加えられている。
続いて、金敏寛弁護士が訴訟の経緯を振り返り、現在の自身の思いも含めて意見陳述した。
―下村文部科学大臣は、堂々と、「拉致問題」、「朝鮮総聯」、「朝鮮共和国」などの政治外交的理由に基づき、日本国民の理解が得られないから、朝鮮高校を不指定処分すると、明確に表明したのです。(中略)被告自身、規則ハ号を削除したことが、政治外交的な理由であることを認識しているはずです。だからこそ、被告は、本件訴訟において、下村文部科学大臣の発言を伏せるかのように、朝鮮高校だけが不指定処分となったのは、本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったという後付けの理由を繰り返し主張せざるを得ないのです―(金弁護士の意見陳述書より)
反論の余地を許さないとても明白な主張だった。
金弁護士はまた、被告による朝鮮学校への差別政策が一貫していること、それがさまざまな問題に波及していることをいくつかの事例を上げながら説明。
16年3月29日、文科大臣が補助金の支給を見直す旨の通知を朝鮮学校のある都道府県に送ったこと、神戸朝鮮高校の生徒たちからお土産が没収された事件、そして民間人による日常的な差別…。
―2009年12月4日、授業中の京都朝鮮初級学校の門前に在特会が集まり、拡声器を用いて、「朝鮮学校、こんなものは学校ではない」、「朝鮮半島帰って」、「スパイの子どもやないか」、「朝鮮学校を日本から叩き出せ」、「北朝鮮に帰ってくださいよ」、「キムチくさい」、「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません」等の言葉を1時間に渡って浴びせ続けるという事件が起きました―(金弁護士の意見陳述書より)
途中、金弁護士は在特会のメンバーらが放った暴言の部分を読みながら言葉を詰まらせ、最後は泣きながら声を絞り出すようにして陳述した。傍聴席にいた九州中高の生徒が何度も顔をぬぐっているのが見えた。
最後に金弁護士は、「原告らには60人を超える弁護士が代理人となっていることも見過ごさないでください。弁護士としてではなく、一人の日本人として、被告の差別政策の残酷さに耐えかねて、それを正すことこそ、外国人と日本人が共生できる社会へと繋がるという思いから、代理人として手を挙げてくれました」と、たくさんの人の思いが集まっていることを伝えながら、偏見にとらわれず公正な判決を下すよう裁判官に求めた。
判決言い渡し日は、来年3月14日(木)14時に決まった。
閉廷後、福岡地裁小倉支部の裏側にある弁護士会館で報告集会が行われた。報告集会にも、変わらず多くの人が参加。傍聴できなかった人のために報告がなされたほか、弁護士、市民団体、九州中高生徒たちが発言やアピールをした。報告集会の内容は、明日の日刊イオで紹介したい。(理)