排外主義あおるフジテレビの入管PR番組
広告
先週土曜日(10月6日)にフジテレビで放映されたある番組が物議をかもしている。
『タイキョの瞬間! 密着24時~出ていってもらいます!~』。番組公式サイトによると、「強制退去を捉えた緊迫のリアルドキュメント」で、外国人の強制退去を担う入国警備官に「密着取材」した番組だという。「不法滞在者や、不法占拠など、違法行為や迷惑行為を許さないプロフェッショナルたちの姿」を描いたというこの番組には「入管行政の人権侵害を隠蔽している」といった批判がネット上を中心に多く寄せられている。
番組放送前日からSNSで話題にのぼっていたので、私も録画視聴した。
一言で、ひどい内容だった。
まずタイトルからして、排外主義をあおるようなつけ方ではないか。以前から入管行政に対しては、長期収容や死亡者(自殺者含む)が出るような収容環境の劣悪さなどが問題視されているにもかかわらず、このような問題点を指摘しないまま取り締まる側の正義をクローズアップするのは「入管行政のプロパガンダ」と批判されても仕方ないだろう。
また番組では、外国人技能実習生として来日して実習先から失踪した人が取り上げられていた。すでにさまざまに報じられていることだが、この技能実習生制度は、単純労働に従事させられ、人権侵害も相次ぐなどその劣悪な労働環境がたびたび問題視されている。国連人権理事会などからも批判を受けている。実習生の失踪には背景にさまざまな問題が絡んでいるにもかかわらず、単に不法滞在した犯罪者として扱うのは問題の所在を覆い隠す役割しか果たさない。
本誌イオでも入管の問題はたびたび取り上げている。今年に限っても、5月号から7月号まで3号連続で『入管の収容問題を追って』と題した緊急ルポを連載した。編集部の(理)さんが取材・執筆を担当した骨太のルポだ。
マスメディア、とくにテレビの影響は非常に大きい。なぜオーバーステイなど不安定な状態で日本に留まる外国人がいるのか、技能実習生として来日した外国人がなぜ実習先から逃げ出したのか、その理由や背景を十分に説明しないまま権力側の視点に乗っかって制作した番組が広く公共の電波に乗るのは恐ろしいことだと思う。(相)