「病を生きる」人たちを取材して
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先日発売された月刊イオの12月号では、「病を生きる」という特別企画を組んだ。
巻頭では、グラフィックデザイナーのホ・サンホさんと、キャンサーペアレンツの西口洋平さんに「『がんを生きる』ということ」をテーマに対談をしていただいた。
ホさんは32歳の時に、血液がんが発症し、苦しく厳しい闘病生活を送ってきた。
西口さんは35歳で胆管がんを告知され、現在も抗がん剤の治療を続けている。
お二人とも、告知された当時は、働き盛りでお子さんも保育園や小学生と幼かった。生活の心配、何より突然に襲った「死の不安」に、どれほど心を痛められただろうか。
お二人がすばらしいのは、自分の病気を、自分だけに留めなかったことだ。
西口さんが「キャンサーペアレンツ~子どもをもつがん患者でつながろう」https://cancer-parents.com/という団体を立ち上げたのは「がん告知」の翌年。周りに相談できる相手が誰もいなかったからだったという。
西口さんの活動については、NHKニュースで偶然知ったが、小さい子をあやしながら、患者同士で話をしている若いママの姿に心臓がドクドクした。「もし自分ががんになったら…」―この思いが押しよせると同時に、患者をつなげるネットワークの必要性に大きくうなづいた。
ホさんは、母校を元気づけるためのプロジェクトやフライヤー作成、特技の空手を生かした活動がどれもユニークで力強く、さまざまな場所で人の輪を広げている。
お二人の来たし日を綴りながら、病気になった当人と家族の苦しみは、計り知れないが、大変なときこそ、人のつながりだと強く感じた。何より、患者への社会の目が温かければ、その苦しみは少しでも癒されるのではないか。
治療の方法や、遺されるであろう家族の心配、そして、日々の生活と、病を生きる人たちの悩みは尽きない。2人に一人が、がんを患う時代。率直で切実なお二人の話に、自身の人生観を大きく試されたのだった。(瑛)
※画像提供=西口洋平さん