『スパイネーション 自白』と『조국이 버린 사람들』
広告
公開中の韓国映画『共犯者たち』(2017年)と『スパイネーション 自白』(2016年)が話題だ。
ともにジャーナリスト・崔承浩さんが監督したドキュメンタリー。『共犯者たち』は2008年からの李明博、朴槿恵両政権の約9年間にわたる言論弾圧の実態を告発した作品で、『スパイネーション 自白』は韓国・国家情報院による「北朝鮮スパイ」捏造事件の真相を暴いた作品。両作品とも2012年に公営放送局MBCを不当解雇された崔監督(現在はMBC社長)と、同じく放送局を解雇された記者らと立ち上げた非営利独立メディア「ニュース打破」取材班による調査報道が基になっている。
今年6月になかのZEROで行われた上映会で『共犯者たち』を鑑賞済みだったので、今回は未見の『スパイネーション 自白』を観た。本作品も『共犯者たち』と同様、良質なドキュメンタリーで、一見の価値ありと勧められる。
作品の白眉は、1960~80年代(とくに70年代)にかけて起こった「在日韓国人留学生スパイ事件」を取り上げた箇所だろう。これまでの取材でお会いしたことのある被害者の方々も何人か登場している。
本作品を鑑賞するためには、事件に対する理解が不可欠だが、代表的な参考書籍として『조국이 버린 사람들 재일동포유학생간첩사건의 기록』(김효순 지음, 서해문집, 2015)がある。著者の金孝淳は「ハンギョレ新聞」の初代東京特派員。事件の全貌と歴史的背景に迫ったルポルタージュ、反共軍事独裁政権下で犯されたおぞましい人権弾圧の証言集となっている。
本書を出版当時に読んだが、映画の公開を前に再読してみた。11月に日本語版、『祖国が棄てた人びと─在日韓国人留学生スパイ事件の記録』(金孝淳著、石坂浩一監訳)が明石書店から出版されている。(相)