坡州で境界を眺める
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12月5日、韓国での現地取材も最終日。この日は京畿道の北西部にある坡州(パジュ)市へ向かった。地図で見ると分かるが、坡州市は朝鮮民主主義人民共和国・開城市のすぐ隣。
市内にある観光スポット「烏頭山(オドゥサン)統一展望台」では川の向こうの開城が見えるという。
まずは展望台の概要を映像で鑑賞。
烏頭山統一展望台は、本当に境界のきわに位置している。自由・平和・繁栄を伴った南北統一を実現させようという願いを込めて、漢江と臨津江の合流地点に設立されたそうだ。「朝鮮民主主義人民共和国と直線距離で約460mしか離れていない場所もある」というような説明に、同じホールで映像を観ていた中学生たちの間から「おお~」という声が上がった。
双眼鏡が設置された場所に行ってみる。
順番待ちをしていると、先ほどの中学生たちが何やら興奮気味に話していた。
「와 오트바이 지나갔어!(わっオートバイが走ってる!)」「나 2대나 봤는데(私は2台も見たよ)」「소리도 들릴가?(音まで聞こえるかな?)」。キャッキャとはしゃぎながら、交代で双眼鏡を覗く。会話の内容とピュアな反応がとても微笑ましい。同行した民プラスの記者は、別の場所で「더 보면 넘어가고싶어질것 같아 안되겠다(これ以上見ていたら渡って行きたくなりそうだからダメだね~)」という感想を聞いたとニコニコしながら教えてくれた。
中学生たちが立ち去ったあと、私も覗いてみる。
「うわっ」と声が出た。本当に、こんなに間近に北側の風景を見られるとは。今さらながら中学生たちの感動に共感した。しばらく見ていると、肩に荷物を担いだ人、走って畑の方向に向かう子ども(?)、牛なども見つけることができた。
どこに何があるか説明する看板も。
その後、時間まで展望台の中を散策。
ちょうど、離散家族に関する特別展示が開催されていた。写真やパネルで離散家族の定義、歴史、再会事業の経緯などが説明されている。
たくさんの人の顔、インタビュー映像、そこに寄せる市民たちの声。3泊4日の韓国での取材を通して統一に対する希望的な思いをたくさん抱いたが、改めて分断の現実が胸に迫った。
館内には他にも、朝鮮民主主義人民共和国の街なかを歩いているような映像体験ブースなど、趣向を凝らした展示コーナーがたくさん。
ここは漢字で直訳すると「念願室」。どんな部屋なのかようすを見てみる。どうやら部屋の真ん中にあるキーボードで文字を入力すると、壁に浮かぶ風船の中にその「願い」が投影されるしくみらしい。
「친구들아 꼭 만나자」―、まだ見ぬ友人たちへ向けた「絶対に会おうね」という約束。抱きつく子どもの純粋な姿に心温まった。
これは来館者が誰でも書き込めるボード。「―――――― 그래서 통일입니다(だから統一です)」と書かれている。この「――――――」の部分に、みな思い思いの言葉を埋めていた。
「私たちはいつも同じ気持ち だから統一です」「私たちは一つの民族♡ だから統一です」。
統一と分断について、目で、身体で体験しながら感じることのできる施設なんだなと思った。こういった場所が、韓国には現在8ヵ所あるという。それぞれの場所で他にどのような展示があるか興味が湧いた。
展望台をあとにして、同じく坡州市内にある観光地「臨津閣」に向かった。2月号では、この内容も含めて坡州市で見聞きしたことを4pで紹介する予定だ。(理)