ハムケヘヨコンサートin 北九州、大成功!
広告
「ハムケヘヨコンサートin北九州―いいね朝鮮学校! 釜山・北九州・筑豊・福岡・山口の友情と絆―」が2月9日、北九州国際会議場で行われ、日本市民と南の同胞、朝鮮学校保護者など約600人が観覧しました。朝鮮学校を支援する日本と南の市民団体(「福岡県朝鮮学校を支援する会」「福岡地区朝鮮学校を支援する会」「筑豊地区朝鮮学校を支援する会」「朝鮮学校を支える会・北九州」「朝鮮学校を支援する山口県ネットワーク」「朝鮮学校と共にする市民の会(釜山)」)が共催して実現したコンサートです。
プログラムには、呼びかけを受けて参加した福岡県と山口県にある朝鮮学校の児童・生徒たちに加え、福岡朝鮮歌舞団、日本のアーティスト、またコンサートのために構成された釜山の同胞公演団による多彩な演目が並びます。
児童たちは直前まで演目の練習に精を出していました。
ロビーでは、九州朝鮮中高級学校のオモニ会がブースを作り、折り紙チマチョゴリ作成の協力を呼びかけていました。3月14日に行われる九州無償化裁判の判決言い渡しの際、アピールの一環として使用するものとのこと。開演まで、多くの方が参加していました。
ついに開演。会場の照明が変わると児童たちが続々と舞台上に現れ、元気いっぱいに「가슴펴고 걸어갈래요(胸を張って歩いて行こう)」を合唱しました。第1部「朝鮮学校・子どもたちの現在(いま)!」の開幕です。オープニングから涙をぬぐう人、スマホで撮影する人、盛大に拍手をおくる人…。朝鮮学校で学ぶ子どもたちの生活を記録した映像をはじめ、続く演目にも会場中から感嘆の声とあたたかい歓声が飛びました。
民族打楽器演奏のあと、九州朝鮮中高級学校の生徒たちが舞台へ。明るい笑顔で歌とダンスを披露しながらも、一方で朝鮮学校が受けている社会的な差別問題についてまっすぐに訴えました。
第1部が終わり休憩時間に。「とにかく素晴らしくて、拍手のしすぎで手が痛い」と笑うのは地元に暮らす74歳の日本人女性。市の施設に置かれたチラシでコンサートのことを知り、友人を連れて訪れたといいます。朝鮮学校を知っていたかとの問いに、「全然知らなかった」。「日本で生まれて日本で育ったのになんで差別するんやろ」と首をかしげていました。
また、朝鮮学校を「北朝鮮の人たちが行く学校だと思っていた」60代の日本人女性たちも、児童・生徒たちの姿が「明るくて元気でよかった」と感想を言い合っていました。「交流の機会があるならもっとアピールしていってほしい」。共通していたのは、学校や子どもたちのことを具体的に知りたいという反応です。
「朝鮮学校を支える会・北九州」の事務局長を務める瑞木実さん(69)は、「これまで朝鮮学校を支援していた人たちの、もうひとつ周囲に手を広げたかった」と話します。一般の人々にも伝わりやすい表現を選び、仲間たちと準備・広報に励んできました。その結果、北九州市、同市教育委員会、福岡市、下関市のほか4つの新聞社とテレビ局からの後援を獲得するという画期的な進展がありました。
「朝鮮学校を支援する山口県ネットワーク」の内岡貞雄さん(73)もそのことを喜びつつ、「圧倒的マジョリティの日本市民にどう伝えるか。初めての人を呼ぶのは難しいし時間もかかるが、ここで終わらないことが大切だ」と継続する課題を挙げました。
「朝鮮学校・子どもたちの未来へ!」と題された第2部には、釜山同胞公演団と福岡朝鮮歌舞団、そして10年以上にわたって歌舞団と交流を続けている日本の和太鼓チーム「志免飛龍太鼓」が出演。パンソリ、現代舞踊、民族器楽、農楽、民族舞踊と、迫力ある演目の数々で観客を魅了しました。
中でも盛り上がったのが「뱃노래 소란(ペンノレソーラン)」。日本と朝鮮半島の友好を願い、朝鮮民謡のペンノレ(舟歌)をソーラン節で表現したオリジナル作品です。歌舞団の歌に合わせて和太鼓、チャンゴの力強い振動が響き、それぞれの文化がみごとに調和していました。フィナーレでは1、2部の出演者全員で統一列車をつくり、手を取り合って未来を開いていこうとの願いを観客に伝えました。
同日夜に持たれた懇親会にはコンサートを準備した方々が集まり、今回の出会いを通じて得た経験や思いをそれぞれに共有しました。
「子どもたちを励ましに来たのに、むしろ自分がエネルギーをもらった」と微笑むのは、現代舞踊「나비춤(蝶の踊り)」を披露したパク・ジェヒョンさん(39)。作品の中で何度も潰れ、消えてしまっても再び生まれてくる蝶は「民族」を表しているといいます。「日本政府に存在を否定されながらも学校や民族を守っているのはすごい。自分がもし同じ立場だったら、果たしてそういられたか…」。実際に出会った朝鮮学校の子どもたちを思いながら本番に臨んだそう。
釜山広域市議会・経済文化委員会のキム・ブミン委員長(43)は、「在日同胞、南の同胞、そして日本の人たちが同じ場所に集まり朝鮮学校のことを伝えるため行動した。とても大きな意義がある。この取り組みが人々の融和のきっかけになれば」と呼びかけました。
北九州市議会の福島司議員(67)は、「文化に国境はないことを肌で感じた。自分も長い間、門司で在日の人々と生活してきた。高校無償化適用のためだけでなく、地域の中での“普段着”の交流が進むよう努力していきたい」とのべました。
コンサートの舞台監督を担当したペ・ソンシクさん(48)が釜山での朝鮮学校支援に参加し始めたのは数年前のこと。映像や写真、記事などを通して朝鮮学校を知る努力を続けてきたといいます。「子どもたちに会ったのは初めて。存在を知っているだけなのと直接話すのとでは全然ちがうと実感した。コンサートも涙が出て…。今日の出会いを南の同胞たちにももっと知らせてあげたい」。
福岡朝鮮歌舞団の歌手・金潤基さん(29)は、「一番伝えたかったテーマは『一緒に生きていこう』。これからやっていくべきは、お互いのいい所を持ちよって、一つの思いを届けることだ」と話していました。
また、南の同胞が日本の支援者に駆け寄って話している言葉を、在日同胞が通訳して伝える場面も。懇親会の会場にはそのような輪がいくつもできていました。「言葉の壁はあるけど、なんとか半年間でコンサートを上げ成功させることができた。思いが同じ方向にむいたら話が進む。民間の交流が先行すれば情勢もついてくるはずだ」(瑞木実さん)。
懇親会では最後に再び大きな統一列車がつくられ、言葉と距離を越えた友情が確認されました。高校無償化問題についても改めて共有され、次の目標や課題に向けての大きなパワーが生まれた場になったと感じました。
最後にお知らせを。上でも書きましたが、九州無償化裁判の判決がついに3月14日(木)に言い渡されます。日本各地5ヵ所で行われている無償化裁判のうち最後の地裁判決になります。無償化弁護団は提訴時、問題の本質を「在日朝鮮人社会に対する日本社会の差別・偏見が典型的に表れた事案である」と訴え、当事者や支援者たちと5年以上におよぶ裁判闘争を繰り広げてきました。裁判所に対し、偏見にとらわれず公正な判決を下すよう強く求めています。
判決当日は県内はもちろん、各地域からもたくさんの方が駆けつけるそうです。社会的にも多くの関心が集まることを願います。(理)