十条駅前で、朝鮮学校の子どもたちを狙ったヘイトデモ
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5月15日、東京朝鮮第3初級学校、東京朝鮮中高級学校の児童・生徒たちが通学時に利用する最寄り駅のJR十条駅前で、「朝鮮総連をさら地にする会」がヘイトデモを行った。ヘイトデモを行った時刻は16時30分。朝鮮学校の児童・生徒たちの下校時間を狙ったきわめて悪質なものだ。この日、東京第3初級の児童たちは集団下校を行い、迂回ルート・別の改札口を利用した。
ヘイトデモを行ったのは、「さら地にする会」の佐藤悟志氏と南朝鮮出身だと名乗る女性の2人のみ。
一方で、SNSを通じて十条駅前でのヘイトデモの情報を知ったカウンターの人びと約20人が集まり、「함께 살아있다(一緒に生きている)」「친구(友達)」「子どもに対する嫌がらせをやめろ」と書かれたプラカードを掲げ、デモの中止を訴えた。
「北朝鮮、総聯、朝鮮学校の批判をするのは基本的な権利だ。北朝鮮の悪口を言って何が悪い。朝鮮学校の批判をして何が悪い。日本は自由の国、民主主義であり、言論、表現の自由が保障されている」
「朝鮮学校では、この表現の自由をヘイトスピーチだと教育している。朝鮮学校の教師たちは子どもたちにこのスピーチを見せればいいのに見せない。朝鮮学校の子どもたちの洗脳が解けてしまうことを恐れているからだ」
聞くに堪えない主張を拡声器を使いわめき散らすデモ隊。周囲では、カウンターの人びとがマイクの音を掻き消そうと、「迷惑だ」「子どもたち、マイノリティーをいじめて楽しいか」「妄想はやめろ」と叫ぶ。
カウンターがデモ隊に抗議しようと近づくが、警察官が2人を囲んでいるため、近づけない。半ば強引に近づいて抗議しようとしたカウンターに、警官が「公務執行妨害で逮捕するぞ!」と脅迫めいた声で威圧する。顔色何一つ変えず、2人を「守る」ことだけに職務を果たす警官の対応に、取材中、憤りを抑えられなかった。
駅前にはデモの反対側の通路でマイクを持ち、ヘイトスピーチに対抗するカウンターの声も響いた。
「十条駅前で外国籍の子どもたちを狙ったヘイトスピーチがあると聞き、私たちは集まった。日本で、東京で、私たちはヘイトスピーチを決して許さない。来年には東京五輪が開かれるのに、このような現状を野放しにして、海外からの友人を招くことができるのか。『この街に、国にヘイトは要らない』という声をあげましょう」
カウンターのY・Mさん(45、都内在住)は、ヘイトデモの情報を入手すると、職場の時間が許す限り、カウンターとして参加しデモの反対を訴えているという。Y・Mさんは、「職場の近くでもヘイトデモが頻繁に起きていて、何が起こっているのか、自分の目で確かめてみようとカウンターに参加したのがきっかけです。私は、ヘイトスピーチはもちろん許せないが、これを放置して、反応しない警察に問題意識を持っている。街中で偏見、差別がばら撒かれているのになぜ止めないのか。ヘイトスピーチを常習化させてはいけない」と話した。
同じくカウンターの松本浩美さん(54)は、「カウンターの人たちの間でも連帯感は広がっている。在日コリアンの友だちを傷つけるような発言を繰り返すヘイトスピーチは決して許せない。良心に従ってカウンターに参加している人たちもいるんだということを知ってほしい」と話した。
十条駅で行われたヘイトデモ。十条駅は、朝鮮学校の児童・生徒たちだけでなく、近隣の日本学校の生徒や学生たちも利用している。学校や会社帰りの時間帯を狙い偏見、差別に満ちた言葉を拡声器でわめき散らす。現場は、デモ隊の2人、警官、カウンター、通行人で終始騒然としていた。
十条駅前でのデモは「子どもたちへの嫌がらせだ」と公然と主張する佐藤氏。朝鮮学校の子どもたちが、今の日本社会の現状に何を思うのだろうかと考えられずにいられなかった。
ヘイトスピーチは子どもたちのアイデンティティーを否定し、子どもたちの心に深い傷を負わせることになりうるものだと現場を取材しながら実感した。
子どもたちの未来を守るため、自分自身、この問題についてもっと勉強しなくてはならないと感じた。(全)