素晴らしかった劇団アランサムセの結成30+1周年公演
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少し日がたちましたが、今日は先月に観た劇団アランサムセの結成30+1周年公演「リプレイ」(6月20~23日、東京・新宿)の感想を書きたいと思います。(理)さんが6月10日のブログでこの公演の宣伝をし、アランサムセの主宰者・金正浩さんのインタビューをアップしています。https://www.io-web.net/ioblog/2019/06/10/78338/ それを読むと作品に対する理解がより深まると思います。
作品は一言で、素晴らしかった。アランサムセの結成30周年は昨年で、それを記念した公演を予定していたけれど諸事情で中止となり、今回、結成30+1周年公演が上演されることとなりました。結果論ですが、昨年の中止が今回の素晴らしい作品を生み出したと言えるのではないでしょうか?
在日朝鮮人は解放後も、ずっと困難な道を歩んできました。困難が重なって押し寄せる中で生活があり運動があったわけですが、金正浩さんがインタビューの中で語っている次の言葉が印象的です。
「アランサムセは結成当初から、民族心や自身の立ち位置の問題について同胞たちに警鐘を鳴らしてきた。私たちを取り巻く情勢や環境、価値観は変化したが、根本的な課題は変わっていない。改めてこれまでの脚本を振り返ると、作家は変われど一貫して同じ問題提起をしているのが分かる。そして今日の問題をどう見るのか、道しるべとなるメッセージも過去の作品から探すことができる。」
今回の「リプレイ」はアランサムセの過去の作品の名場面、名セリフをちりばめながら、30周年公演を中止せざるを得なかった劇団自身の姿を投影しながら物語を作っています。「リプレイ」を観て、私がアランサムセの31年の作品をほぼすべて観ていることに気がつきました。そして確かに、数々の問題提起や警鐘が鳴らされてきたことに思いが至りました。
「リプレイ」の中に次のようなセリフが出てきます。
「そうや、夢を全部抱えて体を重くして、壁を突き破るんや! だから忘れてはいけないんや」
困難な壁が繰り返し前に立ちはだかる中で、夢を捨てて安易なところに逃げ込んでいく、「夢の国」を探す者たちを批判します。乗り越えても壁は残り続けます。前進を阻む困難は残ったまま。乗り越えることが正しいのか、壁は壊さないといけない、そのためには夢を抱え体を重くしてぶち当たらないといけないと言います。
在日朝鮮人の演劇文化を、アランサムセは牽引してきたと思っています。その功績は非常に大きい。これからも素晴らしい作品をたくさん発表してほしいと思います。(k)
朝鮮新報に掲載された「リプレイ」の記事です。ぜひ読んでください。「31年を「決め台詞」で繋げ/劇団アランサムセ結成30年+1周年公演」http://chosonsinbo.com/jp/2019/06/pi-59/