「仲間はずれ、悲しい」-朝鮮幼稚園保護者ら、内閣府などに訴え
広告
「すべての幼児に『幼児教育・保育の無償化』適用を求める要請の集い」が8月5日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で行われ、「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、連絡会)の宋恵淑代表をはじめとする関東地方の幼稚園保護者らが内閣府、文部科学省、厚生労働省の担当者に、朝鮮学園付属の幼稚園も無償化の対象として認めるよう要請した。
冒頭、連絡会の3人の代表が内閣府、文部科学省、厚生労働省の担当者に要請書を手渡した。
要請文で、代表らは、①各種学校の幼児教育・保育施設を無償化の対象として認めること、②上記施設を利用するすべての園児たちに、幼稚園並みの月2.57万円の無償化と、幼稚園預かり保育と同等の月1.13万円を加算する無償化を適用すること―を求めている。
会場には、2歳児の子どもを持つ朝鮮幼稚園保護者をはじめ、幼稚園の教員、校長、学園関係者、日本人支援者が集まり、立ち見が出るほどだった。
続いて保護者からの訴えが続いた。
都内の朝鮮幼稚園に子どもを通わせている40代の女性は、「生まれも育ちも地方なので、夫婦だけで子育てをしてきた。保育園にも入れなかった。朝鮮幼稚園の先生は親と同じように愛情と信念をもって育ててくれている。子どもの成長に合わせた保育内容、学芸会、運動会…日本の幼稚園と変わらないのに、仲間はずれにされることがとても悲しく、我慢できない。無償化は、すべての子どもたちが対象なのに、『あなたの子どもは仲間はずれだ』と言われたら、皆さんはどんな気持ちになりますか。仲間に入れてもらえるように検討してほしい」と伝えた。
高校から幼稚園に通う3歳児までの子ども6人を育てる40代男性は、神奈川県から訪れた。「3、4歳の子どもたちすらも差別する。制度の理念に照らしても明らかに矛盾するし、道理にかなっていない。本当の意味での、社会の一員である私たちを見てほしい。黙っていることは差別を認めることになる。今日来ていただいた日本の方々と力を合わせて間違った制度を正していく」。
移住連の金朋央理事は、「外すための方策としか考えられない。(朝鮮幼稚園以外にも)ブラジル、インド系、ネパール、それ以外のアジア系の学校がたくさんあるが、この問題を知っているのだろうか。多様な教育をするうえで、無償化が子どもの権利として当然認められる社会を作っていくことが大事だ。各省庁にお願いしたい」と訴えた。
他にも、「制度設計の際に各種学校の幼児教育施設のことが念頭にあったのか」「朝鮮学校の保育の実態もきちんと調べるべきだ」などと質問が出された。
田中宏・一橋大学名誉教授は、「外すためにではなく、認めるために知恵を絞ってほしい。官邸ともしっかり相談してほしい」と訴えた。
要請の場には、初鹿明博、池田真紀の両衆議院議員、石川大我参議院議員(以上、立憲民主党)、高良鉄美参議院議員、はたの君枝衆議院議員(日本共産党)らが同席した。
最後に初鹿衆議院議員は、関係省庁の担当者に対し、「保護者たちの切実な思いを理解してもらえたと思う。制度の対象になるような方法を考えてほしい。まずは現地を見に行きましょう。現場を見れば、あえてはずす理由はみつからないはずだ。持ち返ってほしい」と訴えた。
朝鮮幼稚園、一度は認可外保育施設として届出受理
10月1日から行われる幼児教育・保育の無償化の対象は、幼稚園、認可保育所、認定子ども園など。それ以外の幼保機関は、認可外保育施設として届ければ、月3万7000円を上限に補助を受けられる。しかし、政府は各種学校である朝鮮幼稚園などは、「認可外保育施設にも該当しない」としている。
しかし、朝鮮幼稚園は一度は認可外保育施設として申請が受理された経緯があった。
4月24日、東京朝鮮学園は、東京朝鮮第1幼初中級学校、東京朝鮮第4幼初中級学校の認可外保育施設の届出を東京都保健局少子社会対策部保育支援課へ行い、受理された。ところが後日、同課より届出受理は誤りで、取り消したいという連絡がなされた。
取消の原因は政府方針にある「各種学校は…児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しない」というものだったが、この理由は法令上の根拠があいまいだ。
厚労省によれば、認可外保育施設とは、幼稚園以外で幼児教育を目的とする施設において、乳幼児が少なくとも1日4時間以上、週5日、年間39週以上、施設で親と離れることを常態としている場合は、保育の実態があり、こうした施設を認可外施設としている。各種学校認可を受けた外国人学校の中には、何年も前から認可外保育施設としての届出を行い、指導監督を受けてきたところもある。
届出は、児童福祉法に従い、保育の実態に即して判断されるべきで、朝鮮学園幼稚部は、認可外保育施設に該当するという他ないだろう。
朝鮮幼稚園は日本各地に40校あり、今回の無償化に際して対象に含まれるよう働きかけを続けてきた。しかし、政府が「各種学校は対象外」との方針を決め、さらに各地で認可外保育施設への申請も断られるなか、7月に「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」を結成、関係省庁、国会議員への要請を重ねている。
連絡会は、「保育の実態を踏まえた政策を」と朝鮮幼稚園への訪問を求めつつ、政府の会議体や国会の審議で無償化が検討された、「幼稚園類似施設」などへの支援も含め、外国人学校幼児教育施設が無償化の対象に含まれるよう、要請を続けていく。(瑛)