国会に赤ちゃんを連れて~幼保無償化問題で院内集会
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「すべての幼児に『幼児教育・保育の無償化』適用を求める院内集会」(主催:幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会、以下、連絡会)が10月18日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で行われ、立憲民主党の初鹿明博、尾辻かな子、近藤昭一衆議院議員、水岡俊一参議院議員、社民党の吉田ただとも・参議院議員、国民民主党の伊藤孝恵参議院議員らが出席し、外国人学校幼児教育施設や幼稚園類似施設を幼保無償化制度の対象にするため、尽力していくと決意を表明した。
集会には、関東地方の朝鮮幼稚園の関係者や保護者、兵庫県からは外国人学校代表も参加した。2回にかけて紹介したい。
連絡会の宋恵淑代表は、「朝鮮幼稚園が除外されたままのスタートになったのは保護者として遺憾。外国にルーツのある子どもが自らの言葉を学び、風習を感じ取るなかで健やかに育つ、という視点が制度設計に反映されなかったからだ」と問題点を指摘。引き続き、訴えていきたいと語った。
国会議員からも、幼保無償化制度が「憲法14条に基づく法の下の平等に反する」「哲学がない」などと批判があがった。尾辻󠄀かな子・衆議院議員は、「大阪で触れてきた朝鮮幼稚園が排除されたことを見過ごすことができない。各種学校を含め、日本に暮らす子どもが民族的な教育を受けられるように頑張ろう」と訴えた。
また、伊藤孝恵・参議院議員(写真上)は、「障がいを持つ子どもの施設も外されてしまったが、幼稚園類似施設を独自に補助する自治体もでてきた。問題解決のためには、半径3メートル以外の人を巻きこんでこそ。二人集まると意見となり、三人はきざし、大勢はうねりを作る」と声を集めていこうと呼びかけた。
夏からこの問題に尽力してきた、初鹿明博・衆議院議員は、去年の今は外国人労働者の受入れ拡大の法案を強引に通すなど、政府の政策に一貫性がないと批判しつつ、「高校無償化がはじまり、10年近くたったが、明らかにステージが変わっている。外国人と共生し、子どものたちの環境をしっかり整えることが大切。すべての子どもたちを対象にした幼保無償化制度を絶対にやり遂げなければと思った。これからがスタート、諦めずに行こう!」と力強く訴えた。
国会議員からは、民主党政権時代に高校無償化を朝鮮高校に適用できなかったことについて、反省の弁もあった。
会場には、朝鮮幼稚園保護者らも駆けつけた。東京都都内で一番多くの幼稚園児が通う東京朝鮮第一初中級学校からは、金純伊さんら6人の母親たちが幼い子どもを連れて参加。「国と国の問題の矛先を朝鮮学校にむけられることが悲しい。一度、足を運んでほしい。子どもたちは、小さいながら誇りをもって育っている。笑顔を見にきてください」と元気に訴えた。
西東京朝鮮第2初中級学校付属幼稚班保護者の趙丹さんは、8月の間に集中的に保護者たちで学習を重ね、市議会議員への要請をのべ14回行ってきたと語りながら、行政の対応に愕然とした経験を語った。
「ある保護者が町田市に電話したところ、朝鮮幼稚園があることすら知らず、挙句の果てには『日本の幼稚園に転園されたらどうですか?』と言われました」。保護者たちは、今後も、朝鮮幼稚園の存在を知らせるための学校公開や、市長宛ての要請書提出を通じて国へ働きかけていくという。また、国立市長に要請をしたところ、市長が学校を訪れ、市独自の補助金を出すことになった朗報も伝えられた。
8月31日に保護者連絡会が発足した埼玉からもメッセージが届いた。この間、埼玉の保護者たちは、大宮駅にて昼、夜にかけて街頭アピールを重ねている。親と一緒にチラシを配る子どもの熱意に押されてチラシを受け取ってもらったと手ごたえを伝えながら、メッセージはこう結ばれた。
「『みんなちがって、みんないい』という安倍首相の所信表明演説(※)に耳を疑いました。朝鮮幼稚園は除外されてしまいましたが、ここからがスタート。歯を食いしばりながら、埼玉でも頑張ります」。
朝鮮高校生の訴えも切実だった。神奈川朝鮮中高級学校のカン・リヒャンさん(高3)は、「神奈川県の補助金カットに続き、幼稚園も無償化からはずされ、人権を踏みにじられていることに、憤りを感じている。幼稚園生には私たちのような気持ちにさせない。神奈川の生徒一人ひとりがたたかいつづけ、差別を終わらせる」と訴えた。
最後に東京朝鮮第6初級学校の保護者たちが、子どもたちの絵を使ったピケットを掲げ、檀上に上がると会場の場が和んだ。11月2日の日比谷野外音楽堂での全国集会にも持ち寄るという。「子どもたちは、先生たちに愛情たっぷり育ててもらっている。無邪気な子どもをいじめているということをわかってほしい」(洪愛舜さん)。
※安倍首相の所信表明演説(10月4日、一部抜粋)
「みんなちがって、みんないい」
新しい時代の日本に求められるのは、多様性であります。みんなが横並び、画一的な社会システムの在り方を、根本から見直していく必要があります。多様性を認め合い、全ての人がその個性をいかすことができる。そうした社会を創ることで、少子高齢化という大きな壁も、必ずや克服できるはずです。
若者もお年寄りも、女性や男性も、障害や難病のある方も、さらには、一度失敗した方も、誰もが、思う存分その能力を発揮できる、一億総活躍社会を、皆さん、共に、創り上げようではありませんか。