京都で幼保無償化適用を求める緊急集会―300人以上が参加
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「朝鮮幼稚園にも『幼保無償化』適用を! 11.11京都緊急集会」が京都市内で行われ、同胞、日本市民ら300人以上が駆けつけた。同集会は9月19日に発足した「幼保無償化適用を求める京都朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、連絡会)が主催。2012年から朝鮮学校への支援などを続けてきた「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋」(愛称:こっぽんおり)が共催した。
集会でははじめに、弁護士の玄政和さんが幼保無償化から各種学校が排除されたことの不当性について、制度を振り返りながら分かりやすく解説した。
玄弁護士は、「多種多様な教育を行っていること」を理由に日本政府が各種学校を制度外に定めたことについてふれ、「各種学校が多種多様な教育を行っていることと幼保無償化制度の趣旨はそもそも関係ない。多種多様な教育を行うことが、日本政府が支援を行わなくてもよいという理由にはならない」と指摘した。
続いて、連絡会の鄭英姫代表が発足以降の行動について報告。京都府や市への要請、それによって実現した府の職員による朝鮮幼稚園視察のようすなどを説明した。鄭代表は、制度適用への願いを再度訴えた。
こっぽんおりからは事務局長であるさとう大さんが発言した。さとう事務局長は、集会前に参加者たちで練習した歌「声よ集まれ 歌となれ」の歌詞の一部に言及しながら「『今すぐその足をどけてくれ』、その足は誰でしょう? 決してレイシストだけではない。政治そのものが足であり、責任はそれをつくってしまっている国民一人ひとりにある。いま、怒りをエネルギーに変えなくてはいけない」と呼びかけた。
また、今年6月から区や市の議員らを周り、幼保無償化からの除外について声を上げてほしいと働きかけを続けてきたこと、施行直前には60人以上の当事者たちの思いを集めたメッセージ集を添えて京都市に要請活動をしたことなどについて話した。
さらに、「勝負は来年の4月からだと思っている。19年度に限っては国が幼保無償化の資金を出しているが、来年度は1/4を府が、1/4を市が出す。自治体が差別政策に加担するのかと訴えていくべき」と今後の取り組みの展望についても話した。
連帯のあいさつでは二人が登壇。
安井勉京都市議会議員(立憲民主党)は、「振り返るとやはり国会でしっかりとした検討しないままに進んできた経緯があると思う。結果、蓋を開けたら排除があった。政治の壁はあれど、ともに一歩でも二歩でも問題解決に向けて歩を進めていきたい」と話した。
I女性会議・京都の白井美喜子議長は連帯の気持ちを込め、独学で学んだ朝鮮語のあいさつを披露。当事者たちの声を聞いて日本人として胸が痛いとしながら、「カチカジャ! 一緒にがんばりましょう」とエールを送った。
二人の当事者もスピーチに立った。
京都朝鮮第2初級学校の保護者である朴賢憲さんは、「政治とは、税金をどれだけ配分するかという話。青商会がくれた制服や、オモニ給食やウリノレ、君たちが行っている学校教育には価値がないよと日本政府が公然と言っているようなものだ。先代が守ってきた尊厳の問題だと思う」と強くのべながら、「ここには幸いにも薄っぺらい感情ではなくて、この問題は日本人の問題だと心から思っている人がいる。闘いましょう。団結しましょう。人の力を借りるのではなく、自分たちの力で勝ち取りましょう」と熱い思いを伝えた。
同校で教員を務める黄恵淑さんは、「毎日“アンニョンハシムニカ”と元気に登園する姿や、なにかを友達とやり遂げた時の笑顔は日本の保育園、幼稚園に通う日本の子どもたちと同じ。朝鮮人として民族教育を受けるために朝鮮幼稚園へ通うのに差別を受けるのはおかしい」と話した。
こっぽんおり共同代表の板垣竜太さん(同志社大教授)は、「幼保無償化の法律の趣旨には、一人ひとりの健やかな成長を願うといった内容が書かれている。そこから除外するということは、朝鮮学校の子らは健やかに成長しなくてもいいということを日本政府が制度を通じてメッセージとして発してしまっているようなもの」と不安を伝えた。
「植民地主義がきちんと清算されなかったことが、今日の新しい植民地主義を生んでいると思う。その現代的形態が無償化からの除外だ。かつての暴力的で露骨な介入はさすがにできないため、お金を持ってきて教育への介入をしている。現在、あらゆる教育機関がどんどん右ならえをしていっている状況」
「これだけ大きくカバーできる制度の中からぽつんとここだけ抜け落ちているのは、ゼロではなく新たなマイナスを作り出している。非常に大きな構造的な問題だが、同時に法律ではない、解釈や運用の中でそうなってしまっている」(板垣さん)
集会では連絡会のアピール文が発表された。京都朝鮮初級学校保護者の金哲奎さんが朗読し、
1.「外国人幼稚園に『幼保無償化』適用を求めるメッセージを募集」し運動を幅広く展開すること
2.国や地方自治体に「幼保無償化」適用を求める声をより大きくあげていくこと
3.毎週行われる火曜アクションに参加するなど広く社会に訴えていくこと
を呼びかけた。
こっぽんおりからのアピールとして、共同代表の豊福誠二弁護士が発言。「京都襲撃事件の裁判を機に役目は終わったと思ったが、なぜ私がここにいるかというと、裁判の過程で、ヘイトスピーチをしているのは『在特会』ではなく国自体だとしか思えないようなことが度々見えてきたから。今回の除外は明白な人種差別にあたる。各種学校を除外する意味は朝鮮学校除外しかない。そんなことを許せるはずがない」としながら、一方で希望ものべた。
「京都襲撃事件の判決が出た時、予想もしていなかったが国際的に報道された。NYタイムスにも取り上げられた。国際社会は日本の社会状況を厳しく見ている。国際的に見ておかしいのは明らかだ。差別の加害者が国であるというところまで、今後世界にアピールしていきたい」
最後に、アピール文で提起された“具体的行動”について説明があった。京都では今年12月末まで、関係府省への抗議メッセージを広く募集する。#「幼保無償化」適用、#民族差別反対 などのハッシュタグをつけ、SNSで運動を拡散することも呼びかけられた。現在すでにFacebookで発信が始められている。集まったメッセージは来年1月に直接担当府省の担当者へ提出する予定だ。(理)