「当たり前の判決を、福岡から」-九州無償化裁判・控訴審第3回口頭弁論
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九州無償化裁判控訴審第3回口頭弁論が、2月14日、福岡高等裁判所102号法廷で行われました。91席の傍聴券を求めて、約200人が福岡高裁へ足を運びました。
法廷ではこの期間に提出された書類の確認がなされたあと、安元隆治弁護士が意見陳述に立ちました。安元弁護士は、司法修習の同期である金敏寛弁護士に誘われたことから、九州無償化弁護団に名を連ねることになりました。「金くんの誘いなので、二つ返事で」協力したといいます。
「まず冒頭で申し上げたいのは、やはり裁判官の皆さんに朝鮮学校の現地に赴き、実際に見ていただきたいということです」。安元弁護士は、当初は自分自身も朝鮮学校に対して「よく分からなくて怖い」という偏見があったが、学校を訪問してすぐに、あっさりと偏見がなくなったとのべました。
生徒、先生、関係者たちの人間関係に基づいた「自由で温かな雰囲気」があること、硬直的ではなく柔軟な教育が展開されていること、生徒たちが自己肯定感を豊かに育み、素敵で元気に過ごしていること…。丁寧に話しながら、「これらはやはり実際に朝鮮学校に行ってみないと分からないものだと思います」と強調しました。
その上で、前回「朝鮮学校には検証に行かない」との判断を下した裁判官に対しては、「皆さんが『行くまでもない』と判断されたのであれば、僕は、福岡高裁の裁判官の皆さんを信じたいと思います」と念押ししました。
続いて安元弁護士は、今回の裁判で司法が民族差別に毅然とした態度をとることは、ひいては多くの外国人を差別から救うことになり、共生社会の実現に向けて大きな礎になる-という言い方で、意義を語りました。
これまでの無償化裁判で、最も説得力があり、かつ理論的にも緻密なのは大阪地裁の判決だったと話す安元弁護士。「本件のように国が暴走している問題こそ、司法が積極的にその役割を果たすべきです」と司法の良心に訴えました。
安元弁護士は最後に、エピソードを一つ紹介して陳述を終わりました。以下に抜粋します。
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僕と金弁護士にはお互い、同じ年の子どもたちがいます。朝鮮学校での焼肉の際には、僕と金くんは酒を飲み、妻同士は世間話に興じ、子どもたちは夜の朝鮮学校の校庭で一緒に走り回っています。とても幸せな光景です。日本人と在日朝鮮人とが共に生きていく共生の社会は既に始まっています。
今回、司法がその役割を放棄した場合、僕たち日本人は、在日朝鮮人という長い時間を共にした大切なパートナーの手を放し、共生の流れを阻害することになります。
何も特別なことではありません。来るべき共生社会に向けた当たり前の判決を、福岡から求めます。
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陳述後、法廷からは自然と拍手が沸き上がりました(すぐに職員から止められましたが)。
口頭弁論終了後、報告集会では金敏寛弁護士が法廷でのやりとりについて説明。次回期日について若干緊張するやり取りがあったものの、無事に裁判続行が決まったこと(次回期日は4月17日)、同時に次回が結審になるかもしれないとも話していました。続いて、朴憲浩弁護士が、学者による意見書の内容を解説しました。
弁護団は今回、岡山大学法学部・堀口悟郎准教授の意見書とそれに基づいた準備書面を提出しています。堀口准教授は教育法の研究者で、特に「不当な支配」の概念について詳しい方です。
堀口准教授は意見書で、福岡地裁小倉支部が下した判決を全面的に否定。加えて朝鮮学校を無償化制度から外した処分は違法であると、①本件規程13条(適正な学校運営)適合性の判断を誤っている点、②本件規程15条(文科大臣に対して、審査会の意見を聴くことを義務付けるもの)に違反している点、③朝鮮学校を不指定処分にした理由を明らかにせず、行政手続法8条1項(行政は、申請された許認可を拒否する処分をする場合、申請者にその理由を示さなければならないとするもの)に違反している点―から主張しました。
中でも①に関しては、▼「不当な支配」とは、行政や国家、政治家といった学校の外にある権力による支配を指す。そちらにペナルティを科すのではなく、朝鮮学校にペナルティを与えるのは逆転している、▼「不当な支配」は教育的観点からではなく法律的な観点で判断すべきであり、下村文科大臣(当時)には判断の裁量がない、▼歴史的に見て、朝鮮学校と総聯の間に「不当な支配」があり得るはずがない—という理由から、朝鮮学校を不指定処分にしたことは判断の誤りであって違法だと詳細に論じていました。
朴弁護士は、「初めて意見書を読んだときに、(ここまで伝わっているのか)とびっくりした」と言います。たくさんの参考文献にあたり、歴史から解き起こして執筆をしてくれたとのことでした。
その後、他の裁判の記者会見に参加しているという安元弁護士の代わりに、白充弁護士が、法廷で行われた意見陳述の原稿を代読しました。
この日、報告集会終了後に「朝鮮高校無償化即時適用実現全国一斉行動に連帯する福岡県民集会」と街頭行動も行われました。そちらでもたくさんの発言があったので、続きは午後にアップします。(理)