京都の朝鮮幼稚園保護者たちが関係省庁に要請
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京都朝鮮学園の趙明浩理事長をはじめとする「幼保無償化を求める京都朝鮮幼稚園保護者連絡会」(京都連絡会)のメンバーが2月13日、内閣府、文部科学省、厚生労働省の担当者と関係省庁で面会し、朝鮮幼稚園が無償化の対象施設として認められるよう求めた要請を行った。また日本市民や同胞たちから寄せられた幼保無償化適用を求めるメッセージカード4120枚を関係省庁に手渡した。
メッセージカード4120枚提出
要請では、京都連絡会の鄭英姫代表が、「各種学校認可の外国人幼児教育施設だけを形式的な理由で排除するのは、子ども子育て支援法の基本理念と趣旨に反しており、民族差別の意図を感じざるを得ない」として、①すべての園児たちの保育料を無償化すること、②各種学校の無償化のために国による財政的措置を講じることを求めた。
要請文を読み上げた後、京都連絡会が独自で集めた「外国人幼稚園にも『幼保無償化』適用を求めるメッセージ」4120枚を関係省庁の担当者に手渡した。
このメッセージカードは、昨年11月に行われた「朝鮮幼稚園にも『幼保無償化』適用を!11.11京都同胞緊急集会」をきっかけに京都独自で集めたもので、昨年12月末までに各地の広範な市民たちから目標の3000枚を上回る4120枚のメッセージカードが寄せられた。
要請で朝鮮幼稚園保護者たちは、担当者たちに自らの思いを強く訴えた。
「朝鮮幼稚園の保護者だけではなく、多くの日本市民がこの問題に対しておかしいと思っている。メッセージ一つひとつをしっかりと読んでほしい」(鄭さん)
「無償化制度からの除外は、誰にでもわかるいじめだ。大人が子どもたちに目に見える民族差別を教えてどうするのか」(金明恵さん、京都朝鮮初級学校付属幼稚班保護者)
「多種多様な教育の何がいけないのか。仲間はずれは駄目だと子どもでもわかるのに…。京都には、朝鮮幼稚園を支援してくれる友好的な日本の市民がたくさんいる。日本政府の対応は同じ日本人として恥ずかしいとメッセージを書いてくれた。朝鮮幼稚園だから権利を与えない。しかし税金は払わせる―。息苦しい社会を変えてほしい」(安淑麗さん、京都朝鮮第2初級学校付属幼稚班保護者)
要請には関東地方から東京朝鮮第1初中級学校附属幼稚班、埼玉朝鮮幼稚園の保護者たちも応援に駆け付けた。埼玉朝鮮幼稚園保護者の金初美さんは、「責任逃れのワンパターン化した返答ではなく、子どもたちの未来を真剣に考えてほしい」と国の対応を非難した。
続いて趙明浩理事長が①各種学校が適用外とされている現行の制度そのものについて検討の余地があるのか、②現在、各都道府県による無償化制度から対象外となっている施設への支援策について、その対象に朝鮮学校を含む各種学校は含まれているのか―を質問。
質問に対して関係省の担当者は、「現時点で法改正の話はない」「国籍などで子どもたちを差別しているのではなく、施設を類型で分けている」「各種学校認可の幼児教育、保育施設は、法律上、教育の質の担保ができない」と従来の説明を繰り返し、②については明言を避けた。
関東の保護者と経験共有の場も
またこの日、京都と関東の保護者たちの間で、お互いの経験や活動を共有し、幼保無償化運動で直面する各地の悩みや苦労を打ち明ける場が設けられた。
「え!? うちらって同級生なん?」「朝大のどこの学部出身?」「出身地も一緒!」
子どもたちの権利を求めた張り詰めた空気のなかで行われた要請の場と一転、交流の場では京都と関東の幼稚園保護者たちは共通の話題で盛りあがり、場が和んだ。
鄭英姫さんは、「京都では、市民の声を届けようと授乳しながら街頭宣伝に参加したり、当事者である保護者たちを中心に積極的に声を上げてきた。しかし、育児と仕事の合間に街へ出たり、要請を続けていると、なかには『しんどい』『いつまで』と話すオンマたちの声も聞こえてきた」と打ち明ける。
金順華さん(埼玉朝鮮幼稚園保護者)、金純伊さん(東京第1初中付属幼稚班保護者)も、「埼玉・東京でも責任者は大変っていうイメージを持つオンマたちが少なくない」と共感の声を漏らした。
金さんは、「経済的に苦しく、在日朝鮮人に対する偏見や差別にまみれた社会的状況のなかで、朝鮮幼稚園に子どもを通わせていること自体が素晴らしい。他のオンマたちも気持ちがないわけではない。だからこそ自分が一生懸命問題に取り組む背中を見せることで、オンマたちの気持ちを奮い立たせたい」と思いを話す。
鄭さんも「京都では、楽しく運動を盛りあげていこうということで、オンマたちで無償化適用を求めた川柳づくりも行った。敬遠しがちな問題でも知恵と工夫次第で無償化問題に参加してもらうことができると知った」と経験を語る。
他人事ではなく、当事者として幼保無償化問題に関わること―。自治体や国への要請も大切だが、何より保護者たちの気持ちを掘り起こし、運動につなげていく大切さを改めてかみしめていた保護者たち。
別れの場面では「元気が出た。これからもお互い頑張ろうね!」と互いに固い握手を交わし、子どもたちのため、必ず権利を勝ち取ろうと決意を新たにしていた。(全)