使命背負い、リベンジ果たす/大阪朝高ラグビー部・対大阪桐蔭戦
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京都府で行われた第71回近畿高等学校ラグビーフットボール大会(2月15日~23日)で、大会3位の結果を収め、第21回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会(埼玉県・熊谷、3月24日~31日)への切符を手にした大阪朝鮮高級学校ラグビー部。
3月2日、日本ラグビー協会は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために「第21回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会」の中止を発表した。
惜しくも、全国大会で大阪朝高ラグビー部の活躍を目にすることは叶わなかったが、今日のブログでは、昨年の新チーム発足から近畿大会3位、選抜大会出場権獲得までに登りつめた同校ラグビー部の過程を少し紹介したい。
タフネス、ハードプレッシャー
昨年の11月17日に行われた全国高校ラグビーフットボール大会大阪府予選決勝で、大阪桐蔭高校と対戦し、5-66と完敗を喫した大阪朝高ラグビー部。
決勝のグラウンドに立っていたのは、13人の高2の選手たちと、2人の高3の選手たちだった。力の差を見せつけられたものの、多くの高2の選手たちがスタメンで決勝に出場し、経験を重ねたことは、新チームへの期待感にもつながっていった。しかし大阪朝高ラグビー部の権晶秀監督は、そんな周囲の期待とは裏腹に「2年生があんな形で3年生を引退させたんやぞ」と選手たちに厳しい言葉を放った。
「高3は、人数が少ないなか、けが人も多かった。2年生が3年生の分まで頑張らなければいけないのに、決勝の舞台で大敗してしまった。一言で来季の期待感より、3年生への申し訳なさが募った」(権監督)。
今年、冬の花園大会は記念すべき100回目を迎える。新チーム発足当初から権監督は選手たちに、「これからも『大阪朝高ラグビー部』が強豪チームとして発展し、光り輝くか、このまま過去のチームとしてここで終わるかは今の選手たちが今年の花園大会に出場するかにかかっている。大阪朝高ラグビー部の運命が選手たちにかかっている」と話してきたという。
そんななか、新チームが発足し、選手たち自らが立てた1年間のスローガンは「使命」だ。「同胞たちに力と勇気を、後輩たちに夢と希望を与える」―。大阪朝高ラグビー部の使命を背負い1年間たたかい抜くことを決めた選手たち。選手たちはプレッシャーもあるなか、一つずつ課題を克服し練習を積み重ねてきた。
近畿大会を控え、選抜大会を見据えた2月、チームはメンタルにおける「タフネス」と試合の闘い方としての「ハードプレッシャー」の2つのキーワードを掲げた。
そして迎えた近畿大会。大阪朝高は、準々決勝で昨年の花園準優勝校を破り、選抜大会の出場権を獲得。準決勝の京都成章高校との試合は敗れたものの近畿大会3位の結果を収めた。
しかし準決勝の翌日、大阪朝高にはもう一つの試合があった。近畿第3・第4代表決定戦だ。対戦相手は昨秋の大阪府予選決勝で大敗した大阪桐蔭高校。
権監督は試合前のミーティングで、「今日は自分たちのリベンジじゃない。お前らの分はまだや。今日は引退した3年生たちの借りを返す日だ」と選手たちを鼓舞し、グラウンドに送った。
大阪朝高は、試合序盤から攻勢を強め、前半に5つのトライを奪い主導権を握る。相手に攻め入るスキを一切与えず35-0で前半を折り返した。
後半、相手に1トライこそ奪われたものの、大阪朝高は後半、3つのトライを決め、昨年の雪辱を晴らす圧倒的な大差、54-5で大阪桐蔭を下した。
試合後、キャプテンの金勇哲選手は「相手も去年より実力が劣る中、勝って当たり前。全国制覇を目標としているレベルで、あそこで負けていたらだめ」と気を引き締めた。
副キャプテンの李錦寿選手は、「先輩たちの借りを返そうと気合を入れて試合に臨んだ。去年はフィジカルで相手に圧倒されたけど、近畿大会では自分たちがフィジカルで圧倒できた」と手ごたえを感じた。
子どもたちのメッセージが力に
昨年の新チーム結成から積み上げた努力が今大会の結果につながったかもしれない。しかし大会開催期間、ラグビー部の背中を押してくれた存在がいる。
大会開催期間、選手たちは京都朝鮮初級学校に宿泊していた。試合前日の夜、選手たちが学校に着くと寝泊りする教室の黒板には児童たちからのあたたかいメッセージが寄せられていた。
「달리고 달려라 오사까조고 투구부」(走り抜け、大阪朝高ラグビー部)
「투구부 형님,오빠들 시합 잘해주세요」(ラグビー部のヒョンニム、オッパたち、試合頑張ってね)
権監督は「同胞たちは大阪朝高ラグビー部が地域で試合するだけで喜んでくれる。そして私たちもいつも地域の同胞たちからモチベーション、エネルギーをもらっている。この相乗効果がチームにいい影響を及ぼしている」と話す。
選抜大会は、新型コロナウイルスの影響で中止となってしまったが、大阪朝高ラグビー部は、日本各地の同胞たちに力と勇気を、後輩たちに夢と希望を与えるため、今年の花園大阪府予選決勝、そして花園出場まで歩みを止めない。 (全)