レスリング界の新鋭、さらなる高みへ/Vol.3 男子レスリング
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Vol.3 男子レスリングカン・グムソン(21)
1998年5月1日、平壌生まれ。
過去の主な戦績
2018年アジア選手権:優勝
2018年アジア競技大会:優勝
2019年アジア選手権:準優勝(階級はすべて57kg級)
レスリング界の新鋭、さらなる高みへ
金淑美(朝鮮新報平壌支局)
「不利な体勢で相手に身体をつかまれるなど、絶対的窮地からの逆転を可能にしているのが体の柔軟性だ。首と胴体と四肢がそれぞれバラバラに動くかのように見える」。カン・グムソン(21、平壌体育団)の強さを代表監督はそう語る。
レスリング強国・朝鮮の新鋭として、カンが一躍その名を馳せたのが2018年3月のアジア選手権だ。当時20歳、シニアの大会としては初の国際舞台に立ったカンは、男子フリースタイル57kg級で初出場、初優勝という華々しいデビューを飾った。表彰台で国旗を見上げながら大粒の涙をとめどなく流す姿は、見る者に強い印象を残した。
レスリングを始めたのは11歳の時。12年に初めて出場した国内のジュニアユース全国大会で優勝。その後、国内のシニア全国大会でも優勝するなど、実績を積んでいった。
18年のアジア選手権を制し、さらなるタイトル獲得をめざして臨んだ同年8月のアジア大会。カンは初戦で17年世界選手権覇者の高橋侑希(日本)と激突。優勝候補と目されていた相手に勝利し、決勝まで進むも、アジア大会4連覇、世界選手権銅メダリストのベクバヤール・エルデネバト(モンゴル)に敗れ、無念の準優勝となった。
カンは当時を振り返ってこう話す。「優勝して表彰台に上がった時はわからなかったが、実際には数cmしか変わらない表彰台の1位と2位の差が天と地ほども隔たりがあるとその時に気づいた。表彰台の高さはそのまま祖国の権威の高さにつながる。そのことを痛感した」。
東京五輪出場をかけた昨年9月の世界選手権ではメダルを逃したが、今年3月のアジア予選が残っている。57kg級では強豪国であるカザフスタン、インド、イランがすでに出場枠を獲得しており、朝鮮にとっては大きな追い風だ。同じく出場枠を狙う日本勢にカンはこれまで負けなし。好条件が揃う一方で、アジア大会で完敗を喫したベクバヤール・エルデネバトも残っており、熱戦が予想される。
朝鮮選手、続々と出場権獲得
朝鮮民主主義人民共和国は1月末時点でレスリング、陸上(マラソン)、水泳(ダイビング)、射撃、アーチェリー、体操、卓球の7競技で2020年東京五輪の出場権を獲得している。今後も重量挙げ、柔道などの得意競技で出場権を獲得するとみられる。出場権を獲得している主な競技種目と選手たちを紹介する。(朝鮮新報1月27日付、31日付の記事をもとに編集)
1【卓球】女子団体
卓球女子代表は1月22~26日にポルトガルで開催された東京五輪団体戦の世界最終予選に出場。ベスト8に入り、東京五輪の出場権を獲得した。
東京五輪の卓球団体戦の出場枠は男女ともに16チーム。トーナメント形式で行われた最終予選には男子34チーム、女子30チームが参加し、それぞれ16枠のうちの9枠を争った。
チャ・ヒョシム、キム・ソンイ、キム・ナムへ、ピョン・ソンギョンの4選手で構成された朝鮮女子団体チームは22日の初戦でマレーシアに勝利し、ベスト16に進出。五輪出場をかけて23日に韓国と対戦した。第1試合のダブルスでは、チャ・ヒョシム、キム・ナムへ組がチェ・ヒョジュ、シン・ユビン組に勝利。続く第2試合のシングルスでは、2016年のリオデジャネイロ五輪女子シングルスの銅メダリストであるキム・ソンイ選手がソ・ヒョウォン選手を下した。第3試合は落としたものの、第4試合のシングルスでキム・ナムへ選手が勝利し、東京五輪への切符を手にした。
2【レスリング】パク・ヨンミ、リム・ジョンシム選手
昨年9月にカザフスタンで行われたレスリング世界選手権女子フリースタイル53kg級でパク・ヨンミ選手が優勝し、東京五輪への出場権を獲得した(本誌1月号で紹介)。パク選手は現在、世界ランク1位。世界ランク8位のリム・ジョンシム選手も女子フリースタイル62kg級で出場権を獲得した。
3【ダイビング】キム・ミレ選手
女子個人10m部門でキム・ミレ選手が出場権を獲得している。キム選手は日本で開催されたFINA(国際水泳連盟)ダイビングワールドシリーズ2018富士大会、2019相模原大会にも出場したことがある。昨年9月にマレーシアで開催された第8回アジアカップで優勝し、出場権を獲得した。
4【体操】キム・スジョン選手
個人総合部門でキム・スジョン選手が出場権を獲得している。キム選手は、第11回FIG(国際体操連盟)W杯(18年、カタール)種目別ゆかで金メダル、第18回アジア大会でも同種目で金メダルを獲得したほか、個人総合3位に入った。
キム選手がキャプテンを務める団体チームは昨年10月、第49回世界体操選手権(ドイツ)に出場したが、20位にとどまり、団体での五輪出場は逃した。しかし、キム選手が個人10位に入り、五輪出場権を獲得した。