各種学校幼児教育施設も調査対象に/幼保無償化・調査事業の公募はじまる
広告
幼保無償化の対象外となった幼児教育類似施設への支援の在り方に関する調査事業について、その要綱が明らかになり、3月23日より公募が始まった。5月22日が公募の締め切りで、6月下旬に結果が通知される。(調査事業については別項)
朝鮮幼稚園やインターナショナルなど、各種学校認可の外国人学校幼児教育類似施設が支援対象になるのかが注目されるなか、立憲民主党の子ども・子育てPT(座長:阿部とも子衆議院議員)が3月24日、東京・永田町の衆議院第2議員会館で行われ、幼保無償化から外された幼稚園類似施設関係者、政府関係者へのヒアリングが行われた。
同党の阿部ともこ、岡本あき子、早稲田あき(写真左から)、尾辻かな子、大河原まさこ、今井雅人、中川正春衆議院議員らが参加。政府からは文部科学省初等中等教育局から3人が参加した。
また、類似施設からは、NPO・森のようちえん全国ネット、NPOはばたき・ひよこ会、一般社団法人・森のきょうしつ、葉山シュタイナー子どもの家、「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」から代表が参加。無償化対象外の施設からは、入園者、見学者が減っていることや、そもそも保育の実態を把握しないまま始まった幼保無償化制度に対して意見がのべられ、「すべての子ども」が対象となるよう調査を進め、「幼児教育の広がりを持たせるような制度にしてほしい」などと意見が寄せられた。
「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表は、「外国人学校幼児教育類施設は、保育の実態が見られないまま、各種学校という理由だけで幼保無償化の対象から除外された。すべての子どもを支援するという観点から考えてほしい。萩生田文部科学大臣からも、各種学校の幼稚園も新事業の調査対象としてしっかり含めると話があった(19年11月24日)。
調査の対象外と言っている自治体もあるので、政府としてもれなく対象に含めるよう都道府県に通知を出してほしい」と強く訴えた。阿部とも子衆議院議員は、「類型化させることが大事。日本各地の施設に手をあげてほしい」と励ました。
PT終了後には、尾辻かな子衆議院議員が、大阪をはじめ地域から寄せられた朝鮮幼稚園保護者らの声を文科省担当職員に伝え、支援策を講じるよう要請する場面もあった。
5月22日まで公募/ 調査事業の概要
今回の追加措置は、国と自治体が委託契約を結ぶ支援策。地方自治体が手挙げ方式で国に支援を要請し、第三者の審査委員が審査をし、国が承諾する形で補助が行われる。まずは幼保無償化対象外となった施設から自治体への要望が急がれる。 今回の調査事業は、幼稚園や保育所、認定こども園に通っていない満3歳以上の小学校就学前の幼児を対象に、自然体験、様々な遊びや生活体験を通じた集団的な活動を行う施設などに対して、それらの施設等の支援の方策に関する調査を、国が自治体に委託する。
主な調査事項として、①利用する保護者の意識調査、②施設等の活動状況や取組の実態、③支援事業の内容、④指導・監査等の在り方、⑤認可施設への移行に向けた課題把握、支援などだ。無償化対象外となった施設が対象となる。
また、支援対象となる「地域における多様な集団活動等」の主な要件としては、
①無償化の対象となる子どもが9割以上ではない、
②1日4時間以上8時間未満、
③認可外保育施設の指導監督基準を概ね満たす施設として自治体が認証等を行っている(※自治体の事情に応じた基準で代替可能)、
④具体的な指導計画の策定、
⑤適正な会計管理などだ。調査協力費は1人あたり8万円。
補助金が出ているなどを根拠に、自治体が代替可能とみなすかがポイントになる。公募の締め切りは締切は5月22日。
対象外の幼児施設「入園者減った―」悲鳴
立憲民主党の子ども・子育てPTでは、幼保無償化の対象外となったことで、厳しい運営を強いられている幼児教育類似施設の現状が浮き彫りになった。
藤沢市藤岡市で50年以上も続く「ひよこ会」からは大野安代さんが発言し、「無償化が始まって各ご家庭の損得勘定が強くなり、『タダの所に行く』とはっきりとおっしゃる家庭が大多数です」と苦境を吐露。
「藤沢市にマンモス団地ができ、地域の幼稚園が不足していた。それなら居場所作ろうと団地の保護者が中心となって作ってきた、手作りの幼稚園です」と紹介しながら、「主体性を大切に外でのびのび育て、どの子もわけ隔てなく育ててきた。発達や身体的に不安があり、時には幼稚園に断られた人を受け入れながら、それぞれのニーズに応えている。
藤沢市は幼稚園に準じる施設に対し、市独自の補助制度を設け、一定の基準を満たせば、同等の補助金を市が補助しており、他市より恵まれている。ただし茅ヶ崎から通う子どもへの補助はゼロ。それぞれの園が役割を果たせるような政策をしてほしい」と切願した。
認可外保育施設に移行できない制度の仕組みについても意見がなされた。
森のきょうしつの清水研さんは、「無償化が導入され、経済的に余裕のあるご家庭しか来られない。多様な形のオプションがあることが大事で、そういう点では幼保無償化の対象から外されたのは残念だし、今回の調査事業は大切だ。認可施設へは移行したいが、幼稚園設置基準が昭和30年代のもので、ひとクラス80㎡が必要。参入できない形になっている」と意見した。
森のようちえん全国ネットワーク連盟の小林成親理事は、 「厚生労働省は子どもが一人でもいれば届け出るように言うが、なかには認可外保育施設の申請が受理されない県もある。子どもの存在そのものを認めてもらえていないのが実情。国が認め、支援をしていかないと、どうやっても落ちる。幼児教育の広がりを作らなければならない」と現状にあったシステム設計を求めた。
「森のようちえん」とは、自然体験活動を基軸にした子育て・保育・幼少期教育の総称で、主な活動形態としては、認可幼稚園だけでなく、保育園、託児所、学童保育、自主保育、自然学校など様々だ。各地に500ヵ所の施設があり、少子化の中でも毎年、その数が増えているという。
小林さんは、「無償化の対象外となったことで、希望者、見学が減り、入学を取りやめた人もいる。『保育の必要性がない』ということで、森のようちえんの子どもは無償化の対象外になったが、実際に自然保育を行うことで、子どもの育ちにかなり影響がある。長野県には、県として信州型自然保育認定制度という普及型の制度がある」と県独自の制度を紹介した。
阿部とも子衆議院議員は、「幼保無償化の対象外となった施設は、200~300あるのではないか。中にはやめざるをえないところもある。閉園したら調査もできない。調査を急がなくてはならない」と迫った。
文部科学省はこの日、「施設の実態は詳細に把握していない。事業の実施状況を踏まえ、今後の支援策を考えたい」と話していたが、調査事業を機に、「すべての子ども」が幼保無償化の対象になるよう、まずは実態把握がなされ、実態に応じた支援策が講じられるべきだろう。(瑛)