神経を逆なでする安倍首相の「おうち動画」
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かつてSNSに投稿された動画の中でこれほどまでに神経を逆なでするようなものがあっただろうか。
昨日12日に更新された安倍首相のTwitterアカウントが投稿した動画。ミュージシャンの星野源さんが歌う「うちで踊ろう」とともに、安倍首相が自宅で過ごすようすを公開した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため「家にとどまること」を訴える目的で公開されたものだが、アップと同時に批判が殺到した。
この動画は以下のようなツイートとともに投稿された。
「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって多くの命が確実に救われています。そして、今、この瞬間も過酷を極める現場で奮闘して下さっている医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります」「いつかまた、きっとみんなが集まって笑顔で語り合えるときがやってくる。その明日を生み出すために今日はうちで…。どうか皆様のご協力をお願いします」
批判が殺到するのも当然だろう。新型コロナウイルス禍によって多くの人びとが感染拡大と暮らしの不安に直面している最中に、人びとの安全と生活対策のために奔走すべき首相が自宅でくつろぐ動画を投稿したのだから。
安倍首相は人との接触8割減、出勤者を最低7割は減らしてほしいとあらためて外出自粛要請を出しているが、経済活動をしなければ労働者も経営者だって安心して自宅にこもることはできない。人びとに安心して仕事を休んで家にこもってもらうためには休業補償が必要(それも、いますぐ、早急に)なのは当然のことなのだが、政府が実際にやっていることは「補償なき自粛要請」。感染拡大防止のため首相自らが人びとに向けて「家にいること」を訴えること自体が悪いのではない。補償なしには休めないという声を黙殺したまま、当の為政者が優雅なインドアライフを臆面もなく配信するという、政治家としての責任感の絶望的なまでの欠如が批判されているのだ。根本的に庶民の生活になど関心を抱かない人たちがこの国を動かしているという現実をあらためて突きつけられ、愕然とする。いや、そんなことは以前から知っていたが、こんな醜悪な形で突きつけられると、精神的にこたえる。さらに言えば、首相が動画で「コラボ」した当の相手は、自らが無慈悲に切り捨てた音楽・文化業界の人なのだ。
今日からイオ編集部もしばらくリモートワーク態勢に突入する。新型コロナウイルスの感染拡大の早期の終息は難しいのではないか。個人的には悲観的な展望を抱いている。新型コロナウイルスの感染拡大とそれによる生活の困窮は政治の無策や怠慢によって引き起こされた人災の側面も大きい。であれば、生き残りのための自助努力に力を注ぎつつ、政治の無策や怠慢に対しては今後とも抗議の声を上げていくべきだと思っている。(相)