”子どもに矛先、向けないで”- 兵庫、3万7178筆の署名提出
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オモニたち、切実に訴え
大阪に続き、7月15日、兵庫県の朝鮮学校の代表7人が東京・永田町の参議院議員会館を訪れ、外国人学校幼児教育施設への幼保無償化を求める3万7178筆の署名と要請書を内閣府、文部科学省、厚生労働省の担当者に手渡した。
参議院議員会館を訪れたのは、金明美・兵庫朝鮮学校オモニ会連絡会会長、金任淑・幼保無償化適用を求める兵庫朝鮮学園保護者連絡会会長、金錫孝・兵庫朝鮮学園理事長らで、水岡俊一参議院議員(立憲民主党)が同席した。兵庫県で集めた3万7178筆の署名中、6割は日本市民が名を連ねており、署名集めには日本の教職員がこぞって協力したという。
席上、金理事長は、「朝鮮幼稚園も保育の必要性と実態があるにも関わらず、除外されていることに心苦しい思いだ。あたかも、われわれが狙い撃ちされているような制度設計にしか取れない。朝鮮半島出身、朝鮮幼稚園というそれだけで差別され、区別されることは悲しい。どうか差別を見直してほしい。署名に込められた多くの方々の気持ち、思い、重みを受け止めて善処してほしい」と訴えた。宝塚市議会で外国人学校幼稚園への幼保無償化を求める請願が採択されたこと、採択に尽力した議員の言葉も報告した。
金明美・兵庫朝鮮学校オモニ会連絡協議会会長は、「朝鮮幼稚園に通わせるオモニたちの気持ちをわかってほしいとの思いで、新型コロナウイルスの感染者の多い東京に来た」とのべ、途中、何度も涙ぐみながら次のように語った。
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私たちは、日本と朝鮮の悲しい歴史の中で日本に住んでいます。
歴史的経緯からしても、人道的な見地からしても、このような差別はあってはならないことです。
朝鮮学校は、高校無償化から排除され、幼保無償化からはじかれ、コロナ支援対策として打ち出された学生支援緊急給付金から朝鮮大学校も排除されました。
幼稚園から大学まですべての教育課程において、このような様々な差別がなされたことを許せません。
私たちの税金は、子どもの教育に還元されないのですか。
私たちの税金は、日本の子どもたちのためだけに、使われるのでしょうか。
私たちの歴史的背景を考えても、このような差別を受ける理由もなく、ましてやこのことを踏まえても、日本の責務として幼保無償化、大学給付金は平等に扱うべき事案です。
幼保無償化制度を、もう一度、改めなおし、朝鮮幼稚園に適用していただきたい。
最後に質問があります。
国連でも朝鮮学校への差別はしてはいけないという日本政府への勧告が出ているにも関わらず、日本政府が幼保無償化から除外したことを、どう思われますか。
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●周一花さん(神戸朝鮮初中級学校オモニ会会長)
子どもたちは、朝鮮学校で、自分の言葉を話し、言葉を覚え、歌い、遊び、元気に学んでいます。それが何より親としてはうれしいことです。
私たちの学校の75年の歴史で忘れてはならないことは、1995年1月の阪神・淡路大震災です。震災時、神戸の街には何も残らず、がれきのような状態になりました。学校の周辺もそうでした。そこで私たちの学校は避難場所となり、同胞たちや日本の方も避難しました。地域の日本の方々と、お互い励まし合いながら苦境を乗り越えてきました。
高校に引き続き、幼稚園も除外。大学までもです。
私たちは、あなたがたと国籍が違います。お互いの歴史が違うことはあたり前のことだし、同じ歴史上に立っていたとしても、歴史の認識が違います。
しかし、認識の違いや、大人のしがらみ、もめごとに、何も知らない子どもを持ち出すことは、大人として恥ずべきことです。これは、差別であり、いじめです。
大人として、子どもに矛先を向けないでほしい。
日本政府が「すべての子ども」というならば、私たちの子どもが、なぜ「すべての子ども」に含まれないのか。納得がいくように説明してほしい。どうかもう一度、この3万人の声を聞いてほしい。
●鄭淳伊さん(西播朝鮮初中級学校オモニ会・幼稚班保護者代表)
私は現在、西播朝鮮初中級学校(兵庫県姫路市)の幼稚班に子どもを通わせています。
コロナ感染者が増加する東京に行く、ということで、子どもに「オンマ大丈夫?」と心配されましたが、保護者の熱い声援に押されてきました。
子どもは現在、年長組ですが、入園当初から先生が教えてくれた歌や踊りを嬉しそうに披露してくれました。元気に幼稚園に通い、朝鮮の言葉を学び、歌い、踊る姿を見ると、いつも熱いものがこみあげてきます。
自国の言葉を習い、歌う…。このあたり前の権利を守ることが、なぜこんなに大変なのか。矛盾を感じずにいられません。
在日朝鮮人社会においても、子どもたちの健やかな成長を願うことは当然のことであり、日本の法に従って生活している在日外国人において、幼児教育、保育の差別はあってはならないことだと思います。
日本社会が多種多様化するなか、多種多様な教育をすることが理由で、無償化の対象外なることは許されません。金銭的な理由で日本の保育所に通わせているお母さんから、「無償化の対象になったら朝鮮幼稚園に入れるから要請がんばってきてな!」と背中を押されました。
一つひとつが、本当に切実な訴えなのです。
今後、幼保無償化制度が改善されることを切に切に願っています。
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「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表は、幼保無償化の制度設計の段階から、政府は各種学校を名指しで除外し、文科省、内閣府、厚生省が、朝鮮幼稚園関係者の声を聴こうとしなかったことに触れ、「朝鮮幼稚園にはプレゼンも、意見交換の場も設けられなかった。これこそが除外の本質だと思う」と厳しく意見した。
また、宋代表は、「2014年、国連の人種差別撤廃委員会が、朝鮮学校に対する差別とヘイトスピーチについて是正勧告を出しているにも関わらず、日本政府が高校無償化から朝鮮高校を除外し、幼保無償化において『新たな差別』を生み出したことは、世界的には許されないことだ」と指摘。「教育政策に携わる皆さん、重く考えてほしい。日本にもっとよくなってほしい。どうかこの気持ちを受け止め、持ち帰り、考えてほしい」と訴えた。
最後に、水岡俊一参議院議員は、「今日は親の立場としての、肉声を聞いてもらった。行政の方々には、相手の立場に立って考えてほしい。明らかに民族差別、民族対立を生み出している。知らず知らずのうちに民族対立を作っているとすれば、それはやってはいけないことだ」と訴えた。
また、各種学校にも差別なくマスクを支給した厚労省の対応に触れながら、「(差別を是正する)きっかけを作ってくれているのではないか」と指摘。「内部から変革をしてほしい。仲間たちに思いを伝えてほしい」と激励した。
心に響きました。この言葉が通じないなら、政治や行政に関わってはいけない。歴史から学ぶ真摯な姿勢こそ求められているということを改めて感じました。
心に響きました。歴史から学ぶことが大切だということを改めて感じました。