vol.33 命の肯定、 金滿里の「母語」 優生思想との闘い、最前線で
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この8年ほど、非常勤先の大学での授業に、「劇団態変」の役者さんを招いて、パフォーマンスを披露してもらっている。
大阪が拠点の身体芸術集団で、役者全員が身体障害を持つ。
レオタードに身を包んだ役者が、舞台でその人にしかできない動きをする。「障害者の体をこんなに凝視したのは生まれて初めて」と感想を書く学生はほぼ毎年いる。狼狽して、「(倫理的に)間違ってる」と詰め寄って来る学生もいた。「健常者の社会」を自明とし、障害者を「見てはならない者=いてはいけない者」としてきた彼の価値観の根底に触れたのだと思う。
この唯一無二の芸術集団を創設したのが在日朝鮮人二世の金滿里さんである。1953年11月、大阪で生まれた。母、金紅珠は伝統芸能の伝承者、独立運動で官憲にマークされた当時の夫、黄熊度と共に大阪に渡ってきた。母は金さんに継承者の期待をかけたが、娘は三歳でポリオを患う。入院を経て重度の後遺障害が残り、七歳のとき、通名で施設に入った…。(続きは月刊イオ2020年9月号に掲載)
写真:中山和弘
なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。