【イオ ニュース PICK UP】愛知無償化裁判、最高裁が上告を棄却
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高校無償化制度から不当に除外されたことにより学習権、平等権、人格権が侵害されたとして、愛知朝鮮中高級学校の高級部生徒・卒業生らが国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所第二小法廷(菅野博之裁判長)は卒業生側の上告を棄却した。9月2日付で決定された。
愛知朝高生徒・卒業生らが国賠訴訟を起こしたのは2013年1月24日(原告は当初5人、追加訴訟で計10人)。
愛知無償化弁護団(弁護団長:内河惠一)は、日本社会に蔓延する「北朝鮮」嫌悪感情、在日朝鮮人と民族教育の歴史、朝鮮学校を取り巻く環境や背景を紐解きながら、制度除外の違法性を裁判官に伝え続けてきた。また、原告たちは法廷で学校生活について振り返り、差別をやめてほしいと切実に訴えた。
しかし一審、二審でも裁判官は争点をかわし、結論ありきの判決を下して国による差別を上塗り。さらに、高校無償化法では外国人学校の教育内容に関して具体的には問わないと繰り返し表明されているにもかかわらず、判決では朝鮮学校の教育内容に関する言及が数多くあったことも問題視されていた。
「『不当な支配』を受けている疑いがある」という点に固執して最後まで差別構造に目を向けなかった一審・二審判決。今回の上告棄却によって、それらが確定した。
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「このようなお知らせをすることになり、言葉では言い尽くせないほど悔しい気持ちで一杯です」。弁護団の裵明玉事務局長は、上告棄却の知らせを関係者、支援者たちに知らせる際、自身の思いも添えた。
「裁判を始める時、敗訴したらどうするのか、何度も考えました。しかし、これだけのあからさまな差別-しかも子ども達を拉致事件と結びつけるもの-を指をくわえて容認した先に民族教育の未来が開けるとは思えず、4.24教育闘争が結果として朝鮮学校閉鎖を覆せなかったとしても、私たちの心に灯台のように輝き続けていることにも勇気をもらい、闘わない選択肢はないと思いました。
一連の裁判闘争や金曜行動は、3世、4世、5世の時代になっても、私たちは1世、2世と同じように朝鮮人として尊厳をもって生きる道を選ぶことを日本政府と社会に示すものであったと思います。今、敗訴という現実を迎えていますが、弁護団の先生方には力強いお声がけをいただいており、弁護団を作るために李博之さんと二人で内河先生の事務所に伺ったときとは比べものにならない程たくさんの仲間の皆さんに囲まれています。これからも皆様と共にゆけることに感謝し、引き続き頑張っていきたいと思います」(裵事務局長)
また、愛知無償化裁判の原告の一人は、上告棄却の知らせを受けた際の心境について「諦めていたという意味ではなく、東京や大阪での(上告棄却という)結果が続く中で、予想していた部分はあった。原告として証言台に立ったり、街頭宣伝や文科省前での金曜行動をしたことなど、これまでを振り返ると本当に悔しくて残念だ」と話した。
朝鮮高校が無償化制度から除外されて10年。「今は社会人になり裁判に関する知識や認識もあるが、学生の立場で原告になった意味を改めて考えると、勝ちたかった」と裁判にかけた思いをのべつつ、「裁判では結果として負けたが、この闘いの一番の成果は、自分たちを支援してくれる日本の人々、弁護士の先生たちと出会い、今まで以上に連帯が強まったこと。民族教育を守るという観点では大きな教訓になった。次の一歩をどう踏みだすか、みんなで考えていきたい」と力強い決意につなげた。
本日以降、弁護団が正式に声明を発表する予定だ。加えて、高校無償化制度から朝鮮高校が除外された初年度である2010年の5月20日に発足し、これまで裁判支援と運動を支えてきた「朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知」も声明を出す。発表され次第、【イオ ニュース PICK UP】で紹介する。(文・写真:黄理愛)
※写真はすべて2019年のもの