在日朝鮮人を描いた2つのドキュメンタリー映画の上映会開催中
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在日朝鮮人を描いた2つのドキュメンタリー映画の上映会とトークイベントが10月26日から日本全国各地を巡回しながら開催中だ。
上映されているのは『私はチョソンサラムです』(<나는 조선사람입니다>、金哲民監督、97分)と『光の糸』(<우리가 살던 오월은>、朴英二監督、38分)の2作品。両作とも今年公開の作品で、今回が日本での初上映となる。
『私はチョソンサラムです』は韓国人の金哲民さんが手がけた作品で、今年9月に韓国で開催された第12回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭で審査員特別賞を受賞した。
『光の糸』は、『まとう』(2010年)、『蒼(そらいろ)のシンフォニー』(2016年)、『ニジノキセキ』(2019年)などで知られる在日朝鮮人監督の朴英二さんの作品。ソウル市と光州市が共催した5・18民主化闘争40周年を記念する「五月平和フェスティバル」で配信された。
https://www.youtube.com/watch?v=qx2Wb6MPWak&feature=emb_logo
『私はチョソンサラムです』は、日本による植民地支配や祖国解放後の北南分断の歴史を背負いながら、現代の日本で「チョソンサラム(朝鮮人)」として生きる意味について、韓国人監督の目線からさまざまな立場の在日朝鮮人への取材を通じて迫った作品。登場するのは朝鮮学校の児童・生徒やその保護者、教員、民族団体の専従活動家、留学先の韓国でスパイとして投獄された元死刑囚など多岐に渡る。
2002年10月に金剛山で行われた北・南・海外の青年学生大会での在日朝鮮青年たちとの出会いが、金監督をして在日同胞について考えるきっかけになったのだという。監督は、在日同胞との出会いとなった金剛山を皮切りに京都、大阪、東京…金監督は2002年から15年間にわたってさまざまな場所で在日同胞と出会い、撮影を続けてきた。
一方、『光の糸』は、1980年5月の光州民主化闘争(5.18)の歴史を探訪する3泊4日のイベントに参加した、朝鮮高級学校出身で日本の大学に通う在日朝鮮人青年2人の姿を追った。40年前、民主化のためにたたかい、犠牲になった大学生たちの生きざまを前に、今を生きる若者たちは何を感じ、何を思うのか―。また、日本でも光州民主化闘争に共鳴し、たたかいに立ち上がった在日同胞たちにインタビューすることで、在日朝鮮人にとって「5.18」とは何だったのかについても切り込んでいる。
私は、初日の10月26日の東京上映会(北とぴあ、昼の部)に足を運んだ。
作品を鑑賞した感想としては、決して明るい話が描かれているわけではないのだが、鑑賞後はあたたかい気持ちになった。両作とも在日同胞に対するエールとして受け取った。
植民地支配と分断、戦争、冷戦と北南対立がもたらした悲劇や苦悩を描きながらも、単に歴史に翻弄されるだけの存在ではなく、歴史の痛みを誰よりも強く経験しているからこそ祖国統一や、平和、人権といった価値を希求する主体的な存在として描いていたように思えた。日本で在日朝鮮人として生きるということはどういうことなのか―。両作に登場する在日同胞のみなさんが、この決して楽ではない道を堂々と胸を張って歩む姿に感銘を受けた。
今回、急きょ、この上映イベントを企画した理由について朴英二監督は、「日本各地で高校無償化裁判が行われ、多くの人びとがたたかっている。不当判決に心を痛めている人びとがいる。とくに朝鮮学校の子どもたちのことを考えると胸が締めつけられる。そんな今だからこそやるべきだと思った」と話す。
映画は10月26日の東京上映会を皮切りに、11月11日まで神奈川、茨城、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、山口、福岡の1都2府7県を巡回して上映されている。上映後には両監督によるトークショーも行われる。
残る上映は山口(9日)、広島(10日)、福岡(11日)の3ヵ所のみ。
詳細は、
https://hikarinoito.amebaownd.com/posts/10539167
まで。(相)