「朝鮮」再定義
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昨年のことである。「2世とつくる朝鮮料理」で해물파전(海鮮パジョン)を紹介することになった。この連載ではいつも料理名の下に簡単な概要文を添えている。
전…何気なく目にして使っている言葉ではあるものの、いざ説明しようとするとなんと書いたらいいか分からない。そもそもチヂミとの違いは?
まずは軽く調べてみようとインターネットで「チョン 朝鮮」と検索。すると…
うわ、そうじゃんやられた!と思い、まぬけな自分に呆れて笑いが出た。朝鮮語の頭音法則(ㄱ, ㄷ, ㅂ, ㅈの子音が先頭に来る言葉は発音が濁らない)に忠実な「チョン」を書き、朝鮮半島に伝わる料理なので「朝鮮」と入れたが、そりゃあこの単語の並びはネトウヨの大好物でしょうねと遅ればせながら気づいたのである。
そういえばK-popアイドルが日本に来る時、名前の頭にㅈがつくメンバーはだいたい濁音をつけられるよな(준수=ジュンス、정현=ジョンヒョン ※ㅊとの区別か)と思い、試しに「ジョン 韓国」と検索してみる。
すぐに求めているものがヒットした。「香り高い♡エゴマの葉のジョン♡」などハートマークがついているものまである。
なんで料理について知りたいだけでこんな風に汚された言葉を見ないといけないんだろう、しかも分断を伴って…と思った。
朝鮮学校に通ったことがなく、思春期や大人になって自身のルーツを知った方の話を聞くと、そのうちの多くがネットやテレビに傷つけられるという経験をしている。
上のエピソードのように、みな純粋にそのものごとについて知りたかっただけだろう。民族との、自発的な初めての出会いがネガティブなものにさせられている。その絶望感はどれほどだろう。
差別的な意味を重ね重ね付与されてきた「朝鮮」を、自分たちの言葉で再定義する。それが、内実なく膨らんできた、滅茶苦茶に乱暴に使われてきた言葉を元に戻すための方法の一つだと思う。そのきっかけになればとの考えから、来年度1月号の特集『「朝鮮」再定義(仮)』を準備している。
識者によるキーワード解説や論考のほか、「朝鮮」を選び続ける同胞たちのエッセイ、偏見なく「朝鮮」という言葉が使われている場を取材するルポ、ラベルに悩み苦しんでいる人に寄り添いケアするコミュニティセンターの紹介、そして企画に際して期間限定で実施しているアンケートの集計結果を掲載する。
18日から始まったアンケートに、今日までで180人弱が協力して下さっている。自由回答の部分にはたくさんの気持ちや経験が寄せられていた。多様で切実な声を、できる限り誌面で活かしたい。
質問は8つ、匿名で参加できます。未回答の方は、ぜひアンケートフォームに飛んでみて下さい。(理)