実家のクリスマスツリー
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先日、通勤バスに乗って外を眺めていると、いつもは見ない場所にクリスマスツリーが設置されているのを発見した。今年すでに何本もツリーを目にしているが、その日はツリーを見た瞬間、不意に実家での思い出が浮かんだ。
実家の焼肉屋では、毎年クリスマスが近くなるとツリーを出し、お店の照明を落としてツリーライトで店内を照らすというちょっとロマンティックな演出をしていた(聞くと今もやっているとのこと)。
ツリーはプラスチックの組み立て式で、たぶん160cmくらいはあったのではないだろうか。そして箱いっぱいのオーナメント。大きいもの、小さいもの、とがっているもの、ぺらぺらなもの、光を受けて輝くもの、そしてさまざまな形を模したものたち。普段はその存在を忘れているのに、年に1度ひっぱりだすと思い出したように愛着がわいてくる。
幼い頃、ツリーを飾りつけるのはいつも私の仕事だった。両親や従業員さんたちがお店で働いている間に、お客さんのいない場所でひとり装飾に励んでいた。ツリーの上の方に手を伸ばす時はテーブルに乗ったりもしながら、サンタさんや家の形、丸く赤いだけの飾りなどをバランスよく枝に掛けていく。そして最後は大人に抱っこしてもらい、頂点に星を置くのだ。
ある時は、気分が高揚しすぎて「フン~フフンフンフンフンフンフンチャララララーラランランラン♪」とうきうきで飾りつけをしているところを従業員さんに見られていたことがある。自分では歌っている自覚がなく、ニヤニヤした従業員さんと目が合った瞬間にハッとした。ものすごく恥ずかしかったのを覚えている。
小学校に上がってしばらく経ってからは、4歳下の弟と一緒に飾りつけをした。仕上げにアボジがツリー全体にくるくるとライトをかけたら完成。夜、炎のともった暖炉のような温かい色の照明に調整された店内でちかちかと輝くツリーを見ると、なんだかほっとして嬉しくて、邪魔にならないところでよく見つめていた。
クリスマスが来ると大人になった今でもなんとなくうきうきする。と同時にいつも温かい暖色のイメージが浮かんでいたのは、実家でのこの光景と結びついているからなのだなと今さらながら気づいた。
高級部からは寄宿舎に入ったので、もう15年ほど実家のツリーを見ていないかもしれない。あんなに大きいツリーは買えないが(置き場所もない)、ささやかなサイズのものは所有してもいいかなと思った。そうすれば自宅でも年に1度、実家のクリスマスの記憶がよみがえる。(理)