常磐線途中下車の旅(2)
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前回から始まった、福島・浜通り地域を縦断する常磐線の旅の続き。
初日目はいわきから久ノ浜→末続→広野と進んで、富岡を飛ばしてその次の夜ノ森駅に降りた。時刻は16時過ぎ、日没が近い。
夜ノ森駅は桜の名所として知られる夜ノ森地区の玄関口。福島に特段詳しくない私でも「夜ノ森の桜」は知っている。
夜ノ森駅がある双葉郡富岡町は福島第1原発からほど近く、2011年3月の原発爆発事故で全住民が避難したが、避難指示は徐々に解除され、昨年3月10日には帰還困難区域のうち常磐線夜ノ森駅周辺と駅に至る県道や町道の一部が解除された。これは3月14日に営業を再開した夜ノ森駅の利用を可能にするための措置で、住民が帰還したわけではない。駅前の居住エリアは帰還困難区域のままだ。
避難指示が解除された東口側に降り立った。古い駅舎は解体され、真新しい駅舎が建っていた。駅前からまっすぐに県道が伸びるが、沿道には立入禁止柵が並ぶ。柵は途切れることなく立てられていて、沿道の建物に立ち入ることは一切できない。
県のウェブサイトによると、帰還困難区域とは「放射線量が非常に高いレベルにあることから、バリケードなど物理的な防護措置を実施し、避難を求めている区域」のこと。解除されたのは道路だけで、住宅やお店などの商業施設にはバリケードが張り巡らされ、立ち入り禁止。これで「避難指示解除」と言われてもピンとこない。
駅周辺に人影は工事関係者以外ない。震災前も夜ノ森駅の利用者数は1日平均数百人なので、都会で想像するような「駅前のにぎわい」はないが、それにしても駅周辺は静まり返っていた。「ゴーストタウン」という表現がぴったりくる。人が住んでいないので賑わいもあるはずがないのだが。
「帰還困難区域 通行止」のバリケード越しに撮影をしていると、突然「バタバタバタッ!」という音がした。音のする方角を見てみると、壊れた家の窓から鳥が飛び立っていった。主を失って久しい家は雨風と動物の侵入にさらされて、仮に避難解除がなされたとしても住める状態ではないのだろう。
東口とは対照的に、線路を挟んで駅の西側はすでに避難解除がなされたエリアで、少ないながら人も住んでいる。駅前の美容室には明かりが灯っていた。
駅周辺を一通り回ったところで、この日の取材終了。道路は除染されているとはいえ、線量の高い帰還困難区域沿いを長時間歩き回るのはリスクが大きいと判断した。
翌日は富岡、双葉、浪江へ。
次回に続きます。(相)