対談「差別と笑い」村本大輔×木村元彦
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リアルな言葉は、予定調和を嫌う―
村本大輔さんは、原発、沖縄、在日朝鮮人問題などに切り込みながら、独自の笑いの世界を見せる稀有な芸人だ。
コロナ禍のなかでも、大小の独演会を開き、ネタを探しに現場へ足を運び、人と話しこむ。そのなかで生まれる「言葉」に注目するノンフィクションライター・木村元彦さんと「差別と笑い」をテーマに語ってもらった。
ネタとしての在日朝鮮人
司会:在日朝鮮人の私たちは、村本さんにとってどのような存在でしょうか?
村本大輔(以下、村本):それこそ、最高のネタですよ。「違い」というものがまったくなくなっている日本において、違いを守り続けている人たちはおもしろい。大阪も東京も街の顔の差がなくなっているなか、今日来た(桃谷の)コリアタウンにはカラフルな色やハングルがあってね。街の顔がちゃんとある。違いこそ笑いです。
木村元彦(以下、木村):グローバリズムの中で安易な同化をしない人を面白いと思っていて、それと同時に観念としてのマイノリティでなくて、リアルな人との出会いから動く。今日の取材も大阪でやりたいと言ってきたのは、大阪の在日コリアンとの出会いから世界が広がったことを大切にしたいからと聞いて納得した。
村本:今、歴史から在日朝鮮の人たちの存在がどんどん消され、透明人間のようになってきているように思う。僕は帰化してほしくないし、帰化させている方がおかしいと思っていて。トランスジェンダーの人たちもそうだけど、その人はその人で生まれてきたのに…。(続きは月刊イオ2021年4月号に掲載)
むらもと・だいすけ
1980年福井県生まれ。2008年に中川パラダイスとお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。13年に漫才コンクール第43回NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIで優勝。AmebaTV「AMEBA Prime」を通じてニュースに興味を持ち始めたことを気に、原発や沖縄基地問題、朝鮮学校について取りあげた漫才を作り、「THE MANZAI 2017」で披露。日本各地で積極的に独演会を開き、SNSでも発信を続けている。近著に『おれは無関心なあなたを傷つけたい』
きむら・ゆきひこ
1962年愛知県生まれ。代表作にサッカーとユーゴの民族問題を巧みに織り交ぜたユーゴサッカー三部作。『誇り』『悪者見参』、『オシムの言葉』はミズノスポーツライター賞最優秀賞、40万部のベストセラーとなった。ユーゴ紛争を取材する内に日本人として国内の民族問題に目を向けるべきではないかと、2005年より本格的に在日の取材を開始。『橋を架ける者たち』『無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代』『さらばヘイト本』『ぼくは挑戦人』など。