DHC会長のヘイトスピーチ
広告
化粧品・健康食品販売大手のDHCが同社の公式オンラインショップ上に吉田嘉明会長名義で載せている一連の差別文書が問題となっている。
始まりは、昨年11月に載った「ヤケクソくじについて」という文章。自社のサプリメント製品の優位性をアピールする内容だが、その中で吉田会長はサプリメントの販売で競合するライバル企業のサントリーについて、同社の「CMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人」「ネットではチョントリーと揶揄されている」「DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本人です」などと在日朝鮮人に対する蔑視表現を使った。
根拠を示すこともなく、特定の民族や国籍を差別する言葉が並べられたこの文章は「在日コリアンへの差別」だとしてTwitterなどのSNS上で抗議の声が噴出。12月に入って、DHC製品の不買を呼びかけるハッシュタグがトレンド入りするなど大きな話題となった。しかしこの文章は、猛烈な批判や抗議にもかかわらず今も公式サイト上から削除されていない。
この問題についてNHKが4月9日、朝の報道番組「おはよう日本」で取り上げた。番組は、2月に東京都内で行われたDHCへの抗議行動のようすを報じるとともに、同社公式サイトに掲載された件のコラムについて「在日コリアンを蔑む表現をしている」と指摘。同社の商品を愛用してきたという在日朝鮮人の女性の、「ただの失言という域を超えて私たちが直接攻撃されているような気持ちになった」というコメントや、国会でこの問題が取り上げられたことも報道した。差別的なコラムが同社の公式サイト上に今も掲載されたままになっていることも伝えた。
報道を受け、DHCは同日、吉田会長名義のコラムをサイト上にアップしたが、この文章もヘイト表現に満ちている。以下、一部を引用すると、「NHKは幹部・アナウンサー・社員のほとんどがコリアン系である。出演者についても、学者・芸能人・スポーツ選手の多くがコリアン系であり、ひどいことに偶然を装った街角のインタビューさえコリアン系を選んでいる」「自民党の一部のコリアン系の国会議員であるが、野党はコリアン系だらけだからNHKのやることには誰もストップをかけない」「今や日本におけるコリアン系はマイノリティどころか日本の中枢をほとんど牛耳っている大マジョリティである」などなど。身体的な特徴から人の属性を決め付ける表現もあった。
「在日コリアンが日本を支配している」というようなゴリゴリの古典的なネトウヨ言説が有名企業の公式サイト上に掲載されていることに驚いた人もいるのではないだろうか。「まともに取り合うのもばからしい」と切って捨てるのはたやすい。しかしこれ以前から、ウェブサイトや子会社が制作するテレビ番組の内容が問題視されてきたという「実績」が同社にはある。社の公式サイトで今もこのような差別的な認識を会長名義で披歴しているということは、同社がこのような考えを企業理念として掲げていると受け取られても仕方がない。有名企業のトップによるヘイトスピーチをこのまま放置していいのか。社会の側の対応も問われている。(相)