朝大は原点、原動力―/ジャパンラグビートップリーグ新人賞受賞の金秀隆選手、母校を訪問
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ジャパンラグビートップリーグの年間表彰式(5月24日)で新人賞に輝き、各種メディア、各地の同胞の注目を集めている金秀隆選手(23、朝鮮大学校体育学部卒)が、5月31日、東京都小平市の朝鮮大学校を訪れた。
2020年にクボタスピアーズ(千葉県船橋市)に入団した金選手は、1年目にしてトップリーグ開幕から全試合に先発フル出場し、2つのトライを記録。所属リーグ3位に貢献した。また、プレーオフトーナメントでも全試合にフル出場し、チームを初のベスト4へ導くなど、目覚ましい活躍を見せた。
新人賞は、ラグビーワールドカップ2019で活躍した田中史朗、リーチ マイケル、稲垣啓太、姫野和樹選手らも受賞しているもの。個人賞の受賞は朝鮮学校出身者として初、新人賞は、クボタスピアーズ、在日朝鮮人、関東大学リーグ2部出身者として初という快挙となった。また、現在、受賞者の中で外国籍保持者は金選手のみだ。
金選手は、各地の朝鮮学校から訪問依頼を受けるも、「最初は朝大から」との強い思いから、真っ先に同校を訪れた。
学生たちの大きな拍手の中迎えられた金選手は、「この場に立てているのは、朝鮮大学校があったおかげ。これからも朝鮮大学校のために活躍していきたい」と思いをのべた。
また、その後の取材でも、「学生たちの歓声は、日本社会にはないものだった」と改めてうれしさをにじませていた。
これまで数々のメディアの取材で、たびたび朝大の存在を口にしてきた金選手。取材中も母校への並々ならぬ思いを語った。
金選手にとっては、「原点」も「原動力」もすべて朝大だという。大学進学時、強豪校からのオファーを受けるも、「自分は朝鮮人だから」「各地朝鮮高校の選手たちが集結し力を合わせれば負けないはず」との思いから、朝大一択。朝大での経験は、トップリーグでも「MAX生きている」そうだ。「大学リーグ2部で強い学校と戦った経験があったので、トップリーグで相手が外国人選手であろうと、世界トップの選手であろうと、挑んでやろうという気持ちをもって戦える。ハングリー精神は朝大で鍛えられました」(金選手)。
金選手の活躍の軸には、自身のアイデンティティへの確固たる誇りがある。
「昔から、父に言われていたことは、『朝鮮人負けるな』。取材で話したことすべて、親の教育から来ているし、トップリーグ入りや新人賞も、朝鮮学校を選ばせてくれた両親のおかげだということは間違いない。自分たちの選択が正しかったと証明したい」と語る。
取材に同行した兄・金秀昌さんも「大人になって、朝鮮人であることを隠したり、一緒になって馬鹿にすることは、今まで生きてきたことを否定することであり、親を否定することになる。ウリハッキョでそんなことは習っていない。自分らは間違ってないぞ、ということを、秀隆が証明してくれた」口を揃えた。
「朝鮮大学校からトップリーグ入り」の夢を叶えた金選手は、今後の目標について「最終的な役割は、朝大を強くするということ。それまで目標を高く掲げ、しっかり活躍していきたい」と語る。
また、現役の朝大ラグビー部たちへ「頑張って、各地の朝高卒業生たちを全員朝大に入れて、朝鮮学校ラグビー部のいい波を作ってほしい。『朝高の強いメンバーが集結した朝大ラグビー部』はまだ立証されていないから、ぜひその姿を見せてほしい」とエールを送った。
(蘭)