辛い思いをした人こそ、寄り添える/【イオインタビュー】Vol.4 山田洋次監督
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【イオインタビュー】Vol.4
「幸せの黄色いハンカチ」、「男はつらいよ」「学校」シリーズをはじめ、数々の映画を世に送り出してきた山田洋次監督(89)の最新作「キネマの神様」が8月6日から日本各地の映画館で上映される。少年時代に中国東北部で暮らし、朝鮮人や中国人への差別を目の当たりにした経験を持つ山田監督。在日朝鮮人への思いを聞いた。
―山田洋次監督は、少年時代を中国で過ごされました。1945年8月15日の敗戦の日は、どちらにおられましたか?
中国・大連で敗戦を迎えました。中学1年の時でした。父親が旧満州の南満州鉄道(満鉄)に勤めていた関係でハルビンや瀋陽で暮らしていたのです。
当時の満州では、朝鮮人、中国人に対して、露骨な差別がありました。垢じみた服を着ているのは中国人、馬車や人力車をひくのは中国人、乗るのは日本人でした。しかし日本の敗戦で、中国は戦勝国になり、朝鮮は独立したことで、支配、被支配の関係はひっくり返ってしまった。大連にいたわが家族は収入が途絶え、満州にいた日本人は生きているのがやっとでした。
日本人が中国人にひどいことをしたことはわかっていたので、僕らはきっと復讐されると思っていました。日本人は、中国人や朝鮮人を人間と思わず、平気で暴力をふるっていましたから。しかし、中国や朝鮮の人たちは日本人にかなり寛容でした。今でも時々中国に行きますが、罪悪感なしに街を歩くことはできません…。(続きは月刊イオ2021年8月号に掲載)
『キネマの神様』
無類のギャンブル好きなゴウ(沢田研二)は、妻の淑子(宮本信子)と娘(寺島しのぶ)にも見放されているものの、愛してやまないものがあった。それはゴウの青春そのものだった「映画」だ。若き日のゴウ(菅田将暉)は助監督として、女優の園子(北川景子)、また撮影所近くの食堂の看板娘・淑子(永野芽郁)、映写技師のテラシン(野田洋次郎)らに囲まれながら夢を追い求めていた。しかしゴウは初監督作品の撮影初日に大怪我をし、その作品は幻になってしまう。事故から50年…。ゴウの孫・勇太(前田旺志郎)が、古びた映画の脚本を手に取りその面白さに感動し、現代版に書き直して脚本賞に応募しようとゴウに提案する。作品のタイトルは「キネマの神様」―。
ダブル主演を務める予定だった志村けん(20年3月逝去)の遺志を継いだ友人の沢田研二が菅田将暉とともに主演を務めた。松竹映画100周年記念作品。(敬称略)
2021年/日本/125分
監督:山田洋次/脚本:山田洋次、朝原雄三/原作:原田マハ『キネマの神様』/配給:松竹/8月6日から全国公開