息子がRSウイルスに感染した
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「RSウイルスだって!」
筆者の勤務時間中に妻から電話がかかってくることは多くない。かかってくる時は急を要する案件。そしてそれは十中八九、悪い知らせだ。
1歳10ヵ月の息子が流行中のRSウイルス感染症になった。スマートフォンから聞こえてくる妻の声に、思わず「あちゃー」というつぶやきが漏れ出た。
悪い知らせが届いたのは8月2日。とりあえず1週間は保育園を休ませないといけないという。雑誌の校了日は1週間後。この1週間が雑誌編集工程のうちでもっとも忙しい時期だ。
あいにくと妻の職場も簡単に休みを取れる状況ではないという。この期間は毎日出勤して最後の追い込み作業をするのが通常だが、職場に事情を説明して翌日から3日間在宅勤務にしてもらい、自宅で息子の面倒を見ることにした。
思い返せば、7月の最終週から鼻水と咳の症状は出ていた。風邪でも引いたのかと思っていたが、症状がなかなか収まらない。週末からは熱も出始めた。息子が通う保育園でRSウイルス感染症が流行っているのは聞いていた。そんな状況で息子だけかからないなんてありえない。遅かれ早かれ罹患するだろうと覚悟はしていた。
RSウイルス—子どもが生まれるまで存在すら知らなかった。グーグル検索によると、「主に幼い子どもが感染し、発熱やせきなど風邪に似た症状が出る。特に6ヵ月以下の赤ちゃんや心疾患のある赤ちゃんなどが感染すると重症化するおそれがある」。昨年、新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、保育所や幼稚園が休園となり、ステイホーム期間が長かったため感染が広がらなかった。その結果、通常であれば免疫を獲得していた子どもたちの多くが免疫を持っていないため、今年、感染が急拡大しているのではないか―インターネット上には専門家のこのような見立ても載っていた。
大人も感染するが、軽い風邪程度で済むことが多く、重症になることはまずないという。だが、家族が「共倒れ」になることだけは避けたい。乳幼児ともなればどうしても保護者が密着して世話をしなければならない機会が増えてくる。この間、家の中でも可能な限りマスクを装着するなどして、看病する側の対策も講じた。
幸いにも息子の症状は軽かった。食欲がなかったり、呼吸が苦しそうなようすもない。熱もそこまで高くない。とりあえずは一安心。普段とあまり変わらないようすで遊ぶベビーサークル内の息子を横目で見ながら原稿執筆と校正確認に全力投球、といきたいところだが、食事作りと食事介助、水分補給におむつ替え、3~4時間に1回の吸入治療と服薬介助など子どもの面倒をみるため日中は1時間と続けてパソコンの前に座っていられない。息子のお昼寝時間と夜の就寝後の時間を活用し、仕事をこなした。
その後、息子は順調に回復し、週明けから無事に保育園に通えるようになった。
一方、親の方は、というと…。家庭内の感染拡大リスクを分散させるため、夫婦で寝る場所を分けて、妻が息子といっしょに寝るようにした。おかげで筆者自身は感染をまぬがれたが、妻は息子からウイルスをうつされ、数日間、風邪の症状に苦しんでいた。
この間、切実に感じたのは、新型コロナウイルス禍で医療体制がひっ迫する中で、自分や家族が病気になった際に果たして適切な医療サービスを受けることができるのか、家族や周囲のサポートを受けるのも難しくなるのではないか、ということ。この間、息子を何度か病院へ連れて行った。通院の時間帯は平日の夕方や土曜日の午前中だったが、行くたびに病院は大混雑。さほど広くない待合室は親子連れですぐに埋まり、入りきれなかった患者が外にあふれていた。
今回のような事態になったときに実家や親族の助けを求めるにしても、感染症をうつされるリスクを考えると気軽には頼めない。ましてやコロナ禍だ。ハードルはますます高くなる。もし、助けを求めた先が新型コロナウイルスに感染していたり濃厚接触者だったりして身動きが取れなかったら…。そんな心配は杞憂に過ぎないのだろうか。
これだけ感染が爆発的に増えている今、新型コロナウイルス感染症対策を徹底してもいつどこで感染するかわからない。この間、自分の周囲でも陽性者が出てきている。子どもが何かしらの病気を発症したとき、家族が新型コロナウイルスに感染したとき、自分はどうすればいいのか。自分が感染防止のためにとるべき行動について今一度考えてみようと思う。(相)